研究課題/領域番号 |
15K17045
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
後藤 潤 一橋大学, 経済研究所, 講師 (30732432)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 制度 / 経済実験 / 共有資源管理 / 公共財供給ゲーム |
研究実績の概要 |
本科研プロジェクトの主たる目的の一つは、途上国におけるインフォーマルな制度の内生的な動態と経路依存性の解明である。さらに、その研究の主要な貢献は、実験経済学の手法を応用して経済実験を実施し、そこから得られるデータをミクロ計量経済学の枠組みで分析することにある。かかる問題意識にもとづいて、平成27年度では第一に、三重大学の学生を被験者として、共有資源管理における内生的な制度の生成過程を経済実験によって検証した。具体的には、5人一組にグループ化された被験者に対して、以下の三つのルールの下で共有資源を利用することが可能な制度をデザインした。一つ目は、共有資源の利用量に関して全く取り決めのない制度である(オープンアクセス制度)。二つ目は個人ごとに決定した利用量をグループ全体で共有するプール制と呼ばれる制度である。三つ目は、オープンアクセス制度とプール制のどちらを採用するかグループ内の投票で決定することのできる制度である。また、これらの経済実験に加えて、被験者の社会的選好を測定するスタンダードな経済実験も行った。上記の経済実験から得られたデータを統合することで、共有資源管理における特定の制度が選択される経路とその決定要因を明らかにすることが可能となる。このような制度の内生的な動態に関する実験結果は非常に限られているため、本研究結果の貢献は大きい。 これらの実験に加えて、インドの漁村において公共財供給ゲームと呼ばれる経済実験を実施し、罰則制度が形成される要因とその経路依存性を検証した。これによって罰則制度の協力行動に与える有効性と経路依存性を明らかにすることが可能となった。これらの経済実験は、いまだに研究蓄積が十分でない、経済主体の協力的行動を解明する研究として位置づけられ、その意義は大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた問題意識に基づいて、複数の経済実験を行いデータ収集が完了している。また、それらのデータを用いて計量分析を行い主要な結果を得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
フィリピンの中部ルソン島における田植え労働制度を対象とした経済実験を行う。具体的には、田植え労働に着目して複数の制度の中から特定の制度を被験者に選んでもらい、その制度の下で生産性を測定する、「内生的な制度選択実験」を行う予定である。その後は、データ解析を行い論文としてまとめ国際雑誌に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度では研究計画における問題意識に基づいて国内外で経済実験を行ったが、被験者の意思決定に相関させた謝金の支払等で当初の予定よりも少ない支出となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の研究計画にあったフィリピンにおける経済実験を行うために、主に通訳謝金、移動費、実験協力謝金として使用する。
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