研究課題/領域番号 |
15K17046
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
飯田 健志 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(総合グローバル), 講師 (40584561)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 環境技術開発 / 戦略的環境政策 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、国境を越えた企業間での協調的な環境技術開発が、環境の質や社会厚生に対してどのような影響を与えるかを理論的に分析することである。H28年度の研究では、国際市場で競争する企業の「競争的な環境技術開発」と「協調的な環境技術開発」では、どちらがより各国および世界全体の社会厚生を改善するか、について、戦略的環境政策、および政府のコミットメント能力に焦点を当てた分析を行った。モデルは2国2企業からなる第3国市場モデル(数量競争)を用いた。また、技術は末端処理型の環境技術を想定した。第3国も含めた世界全体の社会厚生の観点から、分析で得られた結果の政策的インプリケーションは以下の3点である。 (1) 世界全体の社会厚生を考えた場合、環境損害が小さく、かつ研究開発の効率性が低いのであれば、協調的な環境技術開発は禁止するべきである。 (2) 企業の協調的な環境技術開発を促進したいのであれば、政府は環境税率にコミットするべきである。 (3) 各国の政府は協調的な環境技術開発を認めるか否かの決定に関して協調すべきである。また、企業が協調的な環境技術開発を選択している状況では、戦略的環境政策によって社会厚生が改善するケースがあることも示した。この結果は、戦略的環境政策によって各国が環境規制を緩めるため社会厚生が悪化するという、通常の結論とは異なる。したがって、企業が協調的な環境技術開発を選択している状況では、自由貿易によって各国が戦略的に環境政策を決定したとしても社会厚生が改善する可能性がある。 このように本研究で得られた結果は、環境経済学の理論における学術的貢献だけでなく、グローバルな環境問題を解決するための環境技術政策に関して、企業間での国際協調が有効となる状況や、政府のコミットメント能力および国家間での協調の必要性など、政策的な観点からも有用な情報を提供しており意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H28年度の計画通りに論文を執筆し、国際的な査読付き雑誌に投稿することができたため。ただし、少し完成が遅れたため、国際学会での報告に間に合わなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、H28年度に作成した論文を拡張する。まずは、環境税以外の環境政策手段を用いた分析をおこなう。具体的には、環境税のような経済的インセンティブを用いた手段ではなく、直接規制を用いた分析をおこなう。環境税と直接規制、それぞれのもとで実現する社会厚生を比較することで、国境を越えた企業間での協調的な環境技術開発を促進するための望ましい環境政策手段のあり方について、考察をおこなう。また、環境技術として末端処理型の技術ではなく、生産工程をクリーンにするような技術についても分析をおこないたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文の執筆が国際学会に間に合わず、海外旅費が必要なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度は、すでに国際学会での発表が決定しているため、海外旅費として使用する計画である。
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