本研究は,製品差別化や動学的な状況下における企業の最適な合併戦略,および,政策当局の最適な競争政策について明らかにした.まず,ある企業同士が合併すると,それが他の企業に対して合併するインセンティブをもたらし,それが,合併の連鎖である逐次合併を引き起こすことを明らかにした.本研究の結果は,近年の銀行,鉄鋼,製薬産業等,多くの産業で起きた事案と整合的である.次に,いったん合併が始まった産業では,さらなる合併を政策当局が承認することで,より社会厚生を改善する可能性があることを示した.この結果は,イノベーション等がない限り,合併が社会厚生に負の影響を及ぼすという従来の研究結果と大きく異なる.
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