研究課題/領域番号 |
15K17048
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
高口 鉄平 静岡大学, 情報学部, 准教授 (90611210)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | パーソナルデータ / 経済価値 / 認知 / 感情 / 合理性 / 意思決定 |
研究実績の概要 |
当該年度は、研究目的のひとつである「パーソナルデータの提供者である消費者の提供に対する認識」について研究を進めた。 昨年度の研究において、消費者に関する分析を進める中で、消費者のパーソナルデータの価値に対する認識が、必ずしも合理性に従うものではなく、複雑な状況にあることが明らかになってきた。そこで、当初、研究全体の計画時には企業側の研究と消費者側の研究を同等に分析する予定であったが、当該年度以降、より消費者に焦点を当てた分析を進めることとした。 当該年度の消費者に関する分析の結果、消費者のパーソナルデータの漏えいに対する補償意思額(価値認識)に関しては、必ずしもパーソナルデータの量と比例しないことが明らかとなった。同時に、漏えい時の消費者自身の認知、感情に影響を受けることがわかった。 当該年度の研究は、昨年度の分析をさらに詳細に進めたものであり、結果として、パーソナルデータと消費者の関わりが、価値を有するパーソナルデータの量にもとづく意思決定(純粋な経済合理性にもとづく意思決定)や、人間の合理的行動だけでは説明できないことを一層示すこととなった。この研究結果は、昨今の個人情報保護法の改正、パーソナルデータ利活用に関わる情報銀行、パーソナルデータストア等の制度議論といった政策立案、形成において、きわめて重要な点であると考えられる。次年度は、研究全体の最終年度として、消費者に対する分析を取りまとめ、今後に向けた課題を抽出したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度以降の分析によって、当初の計画よりも消費者に対する分析について取り組むべき課題が多いことがわかり、計画を修正し、消費者分析に注力することとなった。したがって、当初計画よりも企業を対象とした分析が進まなくなってしまった。企業側の計画に届かない点と消費者側の計画以上の研究の進展を踏まえ、総合的にこのように判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで継続的に研究を進める中で、消費者(パーソナルデータを提供する個人)の自身のパーソナルデータに対する価値認識が、個人属性に加え、提供状況、環境、感情、認知等、さまざまな要因の影響を受けることが明らかとなってきた。 来年度は最終年度であり、消費者の価値認識に対する特性を可能な限り明らかにするとともに、今後解明すべき課題を明確にしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度まで、当初計画していたアンケート調査等について、研究計画の修正等の理由から実施できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は最終年度であることから、これまでの成果を踏まえたアンケート調査の実施、また成果の国際学会等での積極的な公表を進めるために使用していきたい。
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