当該年度は、昨年度から実施している当該研究の目的のひとつである「パーソナルデータの提供者である消費者の、自身のパーソナルデータの経済価値に対する認識」について研究を進めた。昨年度の研究において、パーソナルデータと消費者の関りが、価値を有するパーソナルデータの量にもとづく意思決定(純粋な経済合理性にもとづく意思決定)や、人間の合理的行動だけでは説明できないことを示した。
今年度は、消費者のいかなる要素が価値認識に影響を与えるかについて分析を行い、結果として個人の感情、認知が影響を与えている可能性を示唆した。具体的には、自身のパーソナルデータの漏えい時を想定すると、その時に生じる感情のうち、不安や怒りは漏えいに対する補償額を相対的に増大させ、一方で、自身のインターネット利用の内容等に後ろめたさがあると、求める補償額を相対的に減少させる可能性が示された。
また、今年度は、当該研究課題の最終年度であることから、研究全体のとりまとめを行った。当該研究課題はパーソナルデータの経済価値について企業、消費者の両面から分析することであったが、とくに消費者からみた経済価値について、必ずしも経済合理性にもとづかない意思決定が行われる可能性があることが研究全体から示すことができた。
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