本研究の目的は、公益事業の最適組織とその効率性の決定要因について、取引費用の視点から明らかにすることであった。今年度は、公益事業のガバナンスとコミュニケーションタイプの関係について、在外研究中のオーストリア・ウィーンにて情報通信産業12社に対するインタビュー調査を行い、1本の論文へとまとめた。本論文では、フォーマルなコミュニケーションとインフォーマルなコミュニケーションにかかる取引費用の計測を行った。その結果、コミュニケーションの取引費用を測定する際、コミュニケーションサイズ、平均時間、頻度、参加人数に企業間で大きな差が見られたため、これらが測定の際に考慮されるべき重要な要因であることがわかった。また、組織のガバナンスタイプによってそれぞれのコミュニケーションの組み合わせがどのように変化するかを明らかにした。その結果、小規模なコミュニケーションを頻繁に行うグループと大規模なコミュニケーションを少ない頻度で行うグループに企業を分類することができた。両タイプのコミュニケーションを組み合わせた中間形態と言うべき企業も見られた。さらに、組織間コミュニケーションのうち、従来実証分析で軽視されがちであったインフォーマルなコミュニケーションをどのように定量化するかという問題についても取り組んだ。その結果、インタビューによって得られた情報を使って測定した場合と公開された情報のみを使って測定した場合では、測定結果に大きな違いがあることがわかった。
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