研究課題/領域番号 |
15K17050
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
新井 泰弘 高知大学, 人文社会・教育科学系, 講師 (20611213)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 公的研究費 / イノベーション / マッチングファンド |
研究実績の概要 |
今年度は公的研究費制度の在り方について研究を行った。公的研究補助金を投入することを考えると、社会的に最も重要なのは「研究開発者が自己資金では実現できないが、補助金を受け取ることで実現できる社会的に重要なプロジェクト」に対して補助金を与えることである。しかし、政府と研究開発者の間にはプロジェクトに関する情報(実際の費用や、実現確率、プロジェクトの収益性等)の非対称性が存在している。政府は詳細なプロジェクト情報を完全に把握することができないため、「補助金がなかったとしても研究開発者の自己資金で実現できたプロジェクト」に対して資金が投入されてしまい、社会的に必要なプロジェクトに補助金が行き渡らない逆選択の問題が発生する可能性がある。
こうした問題を回避するために社会的に望ましいマッチングファンドシステムについて理論モデルを構築した。既存研究としてScotchmer (2006)が挙げられる。Scotchmer(2006)では、マッチングファンド(政府と研究開発者が相互に研究開発資金を拠出する方法)を適切に利用し、研究開発者に費用負担をさせることにより逆選択問題を軽減できるのではないかと議論している。しかし、彼女の研究では厳密なモデル分析は行われておらず、企業の拠出割合等に関しても議論がなされていない。また、「補助金がなかったとしても研究開発者の自己資金で実現できたプロジェクト」に対して行われる公的投資の非効率さに関しても考慮されていない。 今年度はエディンバラ大学の河村耕平氏と議論を行いながら経済理論モデルを作成し、マッチングファンドが社会的に好ましくなるための条件と産業の特色(プロジェクトの社会的インパクトや企業利潤の大きさ等)を表すパラメタの関係性について研究を行った。基本モデルは既に完成しており、3月末には関西学院大学における産業組織論カンファレンスで報告を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の軸の一つである「公的研究費の在り方」については基本モデルが概ね完成し、2016年中には専門誌に投稿する予定である。今年度後半よりもう一つの軸である研究に対する法的規制の在り方に関する研究を開始する予定であり、概ね当初の予定通り研究は進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
公的研究費制度に関する基本モデルは既に完成しており、今後は基本モデルを拡張し、一般的な形でマッチングファンドの社会的なインパクトを議論する予定である。本年度中に専門誌に投稿を行い、本研究のもう一つの軸である研究に対する規制の在り方について、研究を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
学内入試業務のため、本来参加するはずであった国際学会に出席することができなかった。そのため見積もっていた出張費を次年度に繰り越している。
|
次年度使用額の使用計画 |
繰り越された余剰金額は、海外における学会報告や論文投稿のためのネイティブチェックに利用予定である。
|