(1)「妻の就業・雇用状態別の家計支出の違い」:妻が少なくとも1年間同じ職務・状態にあることによる家計消費の違いについて分析を行った。本研究は、家計経済研究所の「消費生活に関するパネル調査」を用いた。夫は、1年以上、「35時間以上」でかつ「正規の職員・従業員」として働いている世帯に絞って分析を行った。夫に仕事の不確実性がほぼなく、コントロールされている場合、妻の無業と正規・非正規の間の有意な違いが消費に影響を与えていることが確認された。推定された可処分所得の限界効果から、非正規妻の世帯は、他の世帯より限界効果が大きく、消費増加の機会を可処分所得に比較的強く依存している傾向がある。 (2)「家計消費と妻の就業・雇用状態」:(1)では妻の就業・雇用状態は、単に回答された時点での状態のダミー変数を用いて消費の分析を行ってきた。本研究は、(1)と同じデータを活用して、妻の就業・雇用状態確率を多項ロジット推計し、予想された状態確率を消費関数に組み込むことで非正規妻世帯の状態確率が消費にどのような影響を与えるのか分析を行った。本分析から、推定された状態確率で、非正規の状態だけが消費に対して有意で負の関係を示した。このことから非正規雇用という状態から失業リスクが正規雇用より明確に高く存在し、所得の不確実性に晒されている可能性がる。妻の就業・雇用状態でさえも、家計消費に影響を与えることが明らかになった。現在、国内の研究会で報告を準備しており、引き続き論文の改訂を行っている。
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