最終年度は、応義塾大学パネルデータ設計・解析センター提供の「消費生活に関するパネル調査」(旧・公益財団法人 家計経済研究所)を用いて、既婚世帯において妻の就業・雇用携帯の違いが消費に与える影響を実証分析した。 これまでの研究から、非正規で働く妻(と正規で働く夫)のいる世帯は、正規で働く妻(と正規で働く夫)のいる世帯の所得と差がないことがわかったが、その割には、世帯消費が少ないこともわかった。妻の就業・雇用状態をロジット推計して、推計確率を消費関数に用いた場合、正規雇用される確率が高まれば、消費を押し上げる効果があり、非正規雇用の確率が高まれば、消費を抑える方向に働くことがわかった。妻の状態変化の可能性と以降その状態を継続する可能性が高い世帯は、家計消費を減らすことが分かった。正規雇用から、または専業主婦からの非正規雇用への変化は、消費を控えることがわかった。このような失業のリスクと所得自体の低下を有する非正規雇用の特徴から、状態変化と継続の可能性の高まりは、 家計消費を控えて貯蓄を行っていると考えられる。 妻の非正規雇用だけに関わらず、夫が非正規雇用されている場合にも、同じような家計消費の傾向が見られるであろう。2000年以降に非正規雇用が大幅に増えた事実から、非正規夫・非正規妻の世帯の消費は、かなりの低水準であったことがうかがえる。 本研究の成果は、季刊 個人金融 2019年夏号に「就業・雇用形態別の家計消費の現状 ―消費生活に関するパネル調査を用いた分析―」として掲載されている。
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