研究実績の概要 |
平成30年度の研究では、前年度から引き続き、生産活動が枯渇性資源に依存した経済において、知的財産権保護の強さと省資源性能を向上させる技術の進歩に関する理論研究を行った。この課題について、堀健夫氏との共同研究を論文『Intellectual Property Rights Protection in the Presence of Exhaustible Resources』として執筆し、Environmental Economics and Policy Studies誌(2018, Vol.20(4), pp.759-784)に掲載された。さらに、これに関連して省資源技術の開発に与える環境税の影響を明らかにする研究を行った。これはA.A. Liu氏との共同研究であり、論文『Environmental Policy in the Presence of Induced Technological Change』を執筆した。本論文は、Environmental and Resource Economics (2018, Vol.71(1), pp.279-299)に掲載された。平成30年度は、主にこれらの論文の編集作業を行った。 また、環境R&Dの影響は、省資源だけでなく、排出される汚染を削減するように働く末端処理技術にも及ぶ。本研究課題は、末端処理技術に関するR&Dと知的財産権保護法の関係を明らかにすることも目指していた。しかし本課題に関する研究活動によって、知的財産権保護を想定した経済モデルに末端処理技術を導入するのは、その解法に技術的困難性をもつことがわかった。そこで汚染排出に関する末端処理部門に関する基本的な理解を深めるため、これを想定した経済理論モデルを構築し分析をM. Fodha氏とT. Seegmuller氏と共同で行っていた。その結果、環境政策と末端処理部門の関連性を明らかにするに至り、これに関する研究は『Environmental Tax Reform under Debt Constraint』と題し、Annals of Economics and Statistics (2018, Vol.129, pp.33-52)に掲載された。これらを末端処理部門における技術進歩にまで拡張したモデルについて今後も研究活動を継続していく予定である。
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