研究課題/領域番号 |
15K17056
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
湯川 志保 帝京大学, 経済学部, 助教 (50635141)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 出産 / 労働時間 / 家庭内分業 |
研究実績の概要 |
先行研究から、出産は男性の労働時間に影響を与えることが確認されている。本年度は、主に出産による男性の労働時間の変化がBeckerの家庭内分業仮説と整合的かについて検証を行った。具体的には、公益財団法人家計経済研究所が実施している「消費生活に関するパネル調査」を用いて、比較優位の差の指標である夫婦間の学歴差が大きいほど出産が男性の労働時間に与える影響は大きいかどうかと、出産が女性の労働時間や就業に与える影響は、夫婦間の学歴差の大きさによって異なるのかについて確認した。 現段階の分析結果から、妻よりも高い学歴を持つ男性の方がそうでない男性に比べて、出産が労働時間に与える影響が有意に大きいことが確認された。この結果から、Beckerの家庭内分業仮説が日本でも支持されていることが示唆される。また、女性については、夫の学歴が妻の学歴よりも高い夫婦の方がその他の夫婦に比べて、おおむね出産が女性の労働時間に与える負の影響が大きいことや、女性の就業に与える正の影響が小さいことが示された。さらに、男性の賃金についても労働時間と同様の分析を行った結果、自分の学歴が妻の学歴よりも高い男性の方がそうでない男性に比べて、おおむね出産による賃金の上昇が有意に高いことが確認された。 現段階では、比較優位の差の指標として夫婦間の学歴差を用いているが、先行研究を参考にしながらより良い比較優位の差の指標を作成し、分析を行うことは今後の課題としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
出産と家庭内分業に関する分析を行い、結果をまとめることができた。また、出産が男性の労働時間に与える長期的な影響を分析する際に用いる主要ないくつかの変数については作成することができた。しかし、より良い比較優位の差の指標や推定方法については再検討する必要がある。以上のことから、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
出産が男性の労働時間に与える長期的な影響について分析を行う。また、出産と家庭内分業に関する研究について、比較優位の差の指標として用いる変数の再検討やより精緻な分析を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
分析に必要な統計ソフト等を購入した段階で研究費の残額が少額であったため、次年度以降の研究を進める準備として今年度購入する予定だった物品の一部を購入できなかった。研究費を繰越し、次年度に購入する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越金と次年度の研究費は、英文校正費用や研究に必要な書籍の購入、学会発表を行うための旅費などに使用する予定である。
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