本研究では、出産が男性の労働時間や賃金に与える長期的な影響についてグループを細分化して分析をおこなうという課題と、国際比較をおこなうという課題が残されていた。グループを細分化した分析として、夫婦の学歴差別のグループと妻の就業育児休業取得別のグループでのシミュレーション分析を行った。最終年度の主な研究結果は次のとおりである。まず、出産が男性の労働時間や賃金に与える影響においては夫婦の学歴差のグループ間による差が観察され、特に夫の学歴が妻の学歴よりも高い夫婦については、出産の前後で労働時間の増加がみられた。これは以前の研究成果と整合的である。次に、妻の就業別の分析については、育児休業を利用しないで就業継続しているグループと育児休業を取得しながら就業継続しているグループ、就業中断したグループに分けて分析を行った。分析の結果から、長期的に妻が就業を中断した男性、妻が育児休業を取得しながら就業を継続した男性、妻が育児休業を取得せず就業継続をした男性の順におおむね労働時間が長い傾向にあることが示された。賃金についてもおおむね同様の結果を得た。さらに、海外の研究結果と比較すると、就業継続をしているグループの出産が男性の賃金や労働時間に与える長期的な影響はおおむね同じ傾向にあることが明らかになった。 以上を含め本研究は、少子化問題を考える上でも重要な出産が男性の労働成果に与える影響について分析を行ってきた。その結果、夫婦の学歴差別の分析では、出産は家庭内分業を変化させることが確認された。また、妻の就業継続の有無や妻が育児休業を利用したかどうかによって男性の労働時間や賃金に与える長期的な影響に違いがあることも明らかになった。
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