本研究の目標は、持続可能性を考慮した厚生指標を提案し、これにもとづき各国の持続可能な厚生水準を計算し、国際比較を行うことである。平成29年度は前年度まで研究してきた厚生指数をさらに改良するため、厚生指数の基本となる数量指数の理論的研究を行った。
平成29年度の研究実績は以下のようにまとめられる。第一に、Quadratic mean of order r指数という指数群を提案したことである。この指標群はフィッシャー指数や関節ウォルシュ指数などを特殊ケースとして含む、きわめて一般的なものである。第二に、この指数群に属するすべての指数が、代表的な理論的生産性指数であるマルムキスト指数と一致することを証明したことである。第三に、任意の関数を二次近似することが可能である、フレキシブル関数形を新たに考案したことである。
まとめると、新しく導入したフレキシブル関数形の仮定の下で、Quadratic mean of order r指数がマルムキスト指数が一致することを明らかにすることで、本研究はQuadratic mean of order r指数が最良指数であることを示したことになる。この結果により従来考えられている以上に多くの実証的指数によって数量そして厚生の変化を捉えられるということがわかった。今後は様々な実証的指数によっていかに厚生を適切に計測できるかということを研究がすすめられるだろう。
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