研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、総合商社が日本企業の外国直接投資に果たす役割について、海外工場団地・レンタル工場の実態について調査を行うとともに、理論的な考察を進め、(独)経済産業研究所の研究会(2018/5/25, 2018/8/27)にて報告を行った。 政府統計の利用申請も行い、分析用パネルデータの構築を行い、企業活動基本調査などのデータを用いて、予備的な分析を行い、(独)経済産業研究所の研究会(2019/3/6)にて報告を行った。
外資系企業の平均賃金が高いことは日本のみならず、諸外国でもよく観察される事実であり、外資系企業と内資系企業との間の賃金格差は、「外資賃金プレミアム」や「多国籍賃金プレミアム」(multinational wage premium)などと呼ばれて、盛んに研究がなされてきたが、日本企業を対象とした研究はそれほど多くはない。また、日本の労働市場は、長期雇用や定年制、新卒一括採用など、諸外国と異なる特徴を持つため、諸外国の先行研究と同じアプローチが日本に適用できるか否かは慎重に検討しなければならない。こうしたことを踏まえ、ハワイ大学の Theresa Greaney准教授を2018年12月に東京に招聘し、サービス部門・製造業部門における、多国籍企業の賃金プレミアムについて、意見交換を行った。その後、特に、製造業部門とサービス部門の違いに着目しつつ、多国籍企業の賃金プレミアムについて理論的な検討を進めるとともに、文献サーベイを進めた。特に、Egger and Kreickemeier (2013) はHelpman et al. (2004) 型の標準的な企業の異質性を考慮した外国直接投資の理論モデルによって、外資企業の平均賃金が高い理由を説明しようとしているが、賃金決定のメカニズムとしては、公正な賃金モデルを援用している。こうした理論構成が、日本における外資賃金プレミアムの実態に沿うものであるか検討を行った。
|