研究課題/領域番号 |
15K17064
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研究機関 | 沖縄大学 |
研究代表者 |
大城 淳 沖縄大学, 法経学部, 准教授 (00713067)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 財政競争 / 天然資源 / 資本移動 |
研究実績の概要 |
平成27年度は異質な地域特性と企業誘致競争に関する理論的研究を行った.特に,天然資源の豊富な国と乏しい国とを考慮し,資本市場統合およびそれに対する政府の政策の効果を分析した.資源希少な国は資本市場の統合から便益を享受できるものの,企業を自地域にとどめる力が弱く,企業に高い税を課すことができず誘致競争では損をすることを示した. 従来天然資源は地域経済の発展にネガティブな影響を与える,いわゆる資源の呪い効果があると言われてきたが,近年の実証研究では必ずしも資源の呪いが支配的にならないことが示唆されてきた.本研究は企業誘致競争の観点から天然資源がもたらす優位性について理解を深めることができた.実証的に検証可能な命題を提示したことに加え,地域間の政策競争に伴う外部性に強調して向き合うためにはどうすればよいか,一般均衡効果を踏まえた理論的指針を提示することができた. 研究成果として,東京大学小川氏と東京大学佐藤氏との共同研究としてまとめた論文がJournal of Public Economic Theory誌より出版されることが決まった. ここまでの研究では地域が資源を持つかどうかは自然条件で決まり人為的に動かせない状況を想定していた.現在の研究課題の発展的研究として,地域が持つ社会的資源が内生的に生成されるプロセスを明示的に導入したモデルを構築し,地域政策への含意を探るべくデータの整理や分析を進めた.この研究は現在単独研究として進行中であり,残りの研究期間を使って査読誌への出版を目指している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地域特性が地域政府間の政策競争に与える影響を明らかにすることが研究目的であったが,英文査読誌への採録という成果が出ており,研究目的について着実に成果が出ていると評価できる.論文としてまとめることを通じて,既存研究の問題点を整理できたことや,国際的な研究者とのネットワークづくりができたことも貴重である.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を基礎にして,データの整備・解析を続けていく.地域資源に関するエビデンスの蓄積は必ずしも十分とは言えないからである.当初は実証的分析を想定していなかったものの,研究を進める中で実証的に検証可能な命題を整理することができ,研究成果を補強するまたとない機会にある. 英文で国際的な出版を推進するために,それにつながる国際学会での報告を目指す. また,研究会を引き続き主催し国内の優れた研究者たちと対面交流する場を設ける.
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