本研究の目的は地域や都市が持つ地域特性が地域の経済政策に与える影響を調べることである.この目的に即し平成28年度は前年度までの研究を発展的に拡張した2つの研究課題に取り組んだ.(1) 地域が持つ社会的資源が内生的に形成される状況のもとで,望ましい都市政策のあり方を整理した.特に,中心市街地における賑わいを作り出そうとする政策がどういった状況下で正当化されるのかを,居住・通勤・人的資本蓄積を伴う都市経済モデルを用いて理論的に整理した.(2) 地域特性を数種類の歪みに分解して捉える定量的空間経済モデルを開発し,これらの地域特性がどのように地域の経済活動に影響を与えるのか,地域政策が人口分布や経済活動にどのように影響するのかを分析した.日本では地域労働市場における歪みが地域人口の多寡と深く結びついていることを明らかにした. (1)の研究成果は国際学術雑誌The Manchester Schoolにて採録されることが決まった.(2)は分析途上であるものの,途中経過を経済産業研究所よりディスカッション・ペーパーとして公表した.国際学会とワークショップで報告を行った.アメリカで開催されたUrban Economic AssociationおよびRegional Science Association Internationalの国際学会,および大阪大学,慶應義塾大学の国際ワークショップにて報告を行った.次年度にはオランダで開催されるEuropean Regional Science Associationの国際学会にて報告が決まっている.(2)のテーマは2013年に最初の論文が公刊されて以来,世界中の研究者が注目し議論を続けている先端的分野である.成果報告を通じて,当該分野の一翼を担う研究者として国内外で一定程度認知されることができたと考えている. 研究期間全体では,これらの成果に加えて,国際学術雑誌Journal of Public Economic Theoryに研究成果を発表することができた.本プロジェクトは概ね一定の成果を上げたと判断できる.
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