本研究の目的は、南アジアのなかでも女性の労働参加率が低いパキスタンで、それを妨げる規範的・構造的障壁の度合い、障壁を下げうる要因を探り、労働参加を促す政策含意を得ることである。その切り口として、社会規範、具体的には女性を親族以外の男性から隔離するパルダの慣習の強さと、その逸脱費用に焦点を当てる。南アジアではパルダの逸脱は一家の恥であるとの意識が根強く、女性はパルダを守ることで結婚市場における価値を維持する一方、就業機会を逃して いる。本研究では、家計調査により収集したデータをもとに①パルダの強度と②パルダの逸脱費用を計測し、ミクロ計量経済学的な手法を用いて①、②の決定要因を明らかにする。 H30年度は、H29年度に実施した家計調査(パキスタンのパンジャーブ州において女性の就業機会がある輸出向け縫製企業へ通勤が可能な農村を調査地として、未婚の女性がいる家計をランダムに抽出した家計調査)をもとに計量分析を行い、その成果の一部を論文"Female Labor Force Participation and Dowry in Pakistan"に執筆し、査読付き海外学術雑誌に投稿した。現在のところ、アメリカ人口学会(PAA)、Society of Economics of the Household(家族経済学会)、Asian and Australasian Society of Labour Economics(アジア・オーストラリア労働経済学会)等の学会発表で得たコメント、すでに海外学術雑誌に投稿した際に得られたレフェリーコメントなどを参考に、再度改稿のうえ、海外学術雑誌に投稿中である。
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