研究課題/領域番号 |
15K17066
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研究機関 | 独立行政法人経済産業研究所 |
研究代表者 |
近藤 恵介 独立行政法人経済産業研究所, 研究グループ, 研究員 (70734010)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 都市賃金プレミアム / 集積の経済 / 人的資本の外部性 / 全要素生産性 / 労働者・企業マッチデータ |
研究実績の概要 |
なぜ大都市の労働者はより高い賃金を得ることができるのだろうか.これは「都市賃金プレミアム」として知られており,本研究の目的は,この問いに対し包括的な回答を提供することである.労働者・企業(事業所)マッチデータを用いて,この集積の経済効果を労働者要因と企業(事業所)要因に分解する実証分析を行った結果,新たな知見が得られた.初年度の主要な研究成果は以下の2つである. (1) 実証分析に必要な労働者・事業所マッチデータの構築:具体的には,「賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)の労働者個票データと,「工業統計調査」(経済産業省)及び「経済センサス-活動調査」(経済産業省)の製造業事業所個票データを,「事業所・企業統計調査」(総務省)及び「経済センサス-基礎調査」(総務省)の事業所情報を介して接続することで1993年から2013年までの製造業に関する労働者・事業所マッチデータを構築した. (2) 労働者・事業所マッチデータを用いた分析と論文の執筆:構築した労働者・事業所マッチデータを用いて,都市賃金プレミアムの度合いを量的に計測した.事業所属性を新たに制御すると,都市賃金プレミアムの度合いは小さくなることが観測されており,これはより大きな都市に立地する事業所ほど平均的に規模が大きく生産性も高いことと関連している.事業所の地理的分布の偏りが都市賃金プレミアムを過大に押し上げる要因と考えられる.また都市賃金プレミアムの源泉の一つとして,高学歴者の都市への集中が都市レベルで正の外部性をもたらしている可能性が高いことがわかった.得られた分析結果をまとめ,論文の草稿を執筆した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の初年度は,各種データの申請手続き,労働者・企業マッチデータの構築と実証分析,また関連する文献調査を計画していたが,おおむね当初の予定通り進んでいると考えている.研究成果として合計で2本の論文を執筆予定であるが,現時点で1本目の論文の草稿を執筆できている.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度内に2本の論文をディスカッションペーパーとして公表予定であり,最終的には,国際的な査読付き学術雑誌への掲載を目標として投稿していくことを考えている.学術雑誌への投稿に向けて,今後は執筆した論文を研究会や学会で報告し様々な研究者の意見を参考にして,分析結果の信頼性を高めていく予定である.また同時並行で2本目の論文の執筆に向けて準備を進めている段階である.2本目の論文では,新たにサービス産業の事業所を考慮した労働者・事業所マッチデータを完成させ,製造業とサービス産業の間の違いを比較した都市賃金プレミアムの議論を行う予定である.今後は国内だけでなく国際学会にも積極的に参加し,世界で通用する水準の研究成果を出すことを目標としている.以上の研究成果は所属機関である経済産業研究所のウェブページを利用することで,社会・国民に伝わるように今後発信していくことを考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
比較的少額であったことから無理に使用せず,次年度への研究費として繰り越すことを決めた.
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度は国内外の学会で研究成果を報告予定であり,出張旅費として使用する予定である.
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