研究課題/領域番号 |
15K17068
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
宮本 拓郎 早稲田大学, 政治経済学術院, 助教 (30738711)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自主的アプローチ / 環境規制 / 企業の異質性 |
研究実績の概要 |
環境問題に対する自主的アプローチは、全ての企業に対して一律になりがちな伝統的な直接規制と比較して、企業の異質性に対して柔軟に対応できることが利点とされてきた。本研究では、直接規制の代替政策として自主的アプローチを利用する場合に、企業の個別事情を考慮し、柔軟に対応することが最も望ましいのか、最も望ましくなるのはどのような時なのか検討した。異質性の種類によって、最も望ましい自主的アプローチの形状が異なる可能性も考慮し、汚染削減の技術水準と(政策導入前の)排出水準の2種類の異質性を検討した。
研究の結果、柔軟に対応するのが望ましくなるのは、汚染削減費用が高い企業への緩和措置が正当化できるケースのみであることが分かった。また、異質性の種類によって、高い企業への緩和措置が正当化できるケースが異なることも明らかにしたが、汚染削減費用が高い企業が多数派であるときは政策水準を一律にしたほうが良いこと分かった。
本研究の学術的な貢献は、企業の異質性を勘案した上で、自主的アプローチを(そのメリット・デメリットを包括的に勘案した上で)理論的に分析したことである。自主的アプローチが環境政策として利用されるようになった1990年以降、自主的アプローチに関する経済理論的な研究は多数行われたが、企業の異質性を考慮した経済理論的な研究は存在しない。企業の異質性に柔軟に対応できることが利点とされてきたことを鑑みれば、異質性を考慮した研究は環境政策に対する有用な知見をもたらすと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年8月5~7日に台湾・台北市のAcademia Sinicaで開催されたThe 5th Congress of East Asian Association of Environmental and Resource Economics (EAAERE)のポスターセッションで、"Does an Optimal Voluntary Approach Flexibly and Efficiently Control Emissions from Heterogeneous Firms?"というタイトルで報告を行った。そこで得られたフィードバックをもとに改訂を行い、研究計画書の予定通り、2016年6月に開催されるEuropean Association of Environmental and Resource Economists(EAERE) 22nd Annual Conferenceでの研究報告が受理され、報告する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
政府の行政指導と法的規制との関係が、環境分野における自主的アプローチと法的規制の関係と相似的である中、本研究は前者をも射程に収めうるものである。その意味で環境政策以外の規制政策においても政策的インプリケーションを有していると考えられるため、他分野の規制政策の事例を調査し、本研究の成果が適用可能な事例を明らかにしたいと考えている。そのため、2016年夏に「法と経済学」もしくは「産業組織論」に関するヨーロッパの学会で研究報告や情報収集を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年3月にヨーロッパで開催される学会に報告申し込みを行い、その参加費・旅費用に、次年度の予算から10万円前倒し請求を行ったが、報告申し込みが受理されなかったため、学会参加を取りやめたため、予算が余ることになり自年度仕様額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年に夏に実施される国際学会で発表を行う(発表申込完了・審査中)。その学会の参加費もしくは旅費として利用する予定である。
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