前年度に理論モデルから得た研究成果をまとめた論文を6~9月にかけてヨーロッパで開催された国際学会3件(European Association of Environmental and Resource Economists、European Association of Research in Industrial Economics、European Association of Law and Economics)で報告を行った。これらの学会では、本研究の報告だけでなく、主に欧州の研究者と意見交換を行うことができ、また、他の研究者の報告を聞くことで研究の動向を知る良い機会にもなった。学会での研究報告や意見交換で得られたフィードバックは、論文の改訂作業に有意義なものとなった。論文は本年度末に英文査読付き学術誌に投稿し、おおむね計画通りに研究を進めることができた。 本年度は、学会発表とともに前年度の研究成果が環境以外の分野の規制政策でどのように位置づけられるのかも検討してきた。本研究の理論モデルが分析対象としている政策は、法律の分野ではMeta-regulationと呼ばれる政府が自主規制を促す・強いる政策であること。また、モデルの分析対象の政策は、Comply or Explainと呼ばれる行動規範(コード)を守ることを原則として、行動規範を守れない場合に説明を求める規制アプローチの形であり、日本でも2015年に導入されたヨーロッパを中心に普及しているコーポレートガバナンスの分野で利用されているものでもあることの2点が明らかになった。以上の2点を前年度までの研究成果に盛り込み、論文の改訂を行った結果、規制政策に対してより広範囲にわたる政策的含意を引き出すことに成功したと思われる。
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