本研究は,家計の労働供給行動として就業選択行動を採用した最適所得税モデルを構築し,誘因両立的な再分配政策を提示するための理論分析を行った。具体的には,人的資本投資の考慮したモデル,動学的な就業選択モデルにおける年齢に依存した労働所得税のあり方,非自発的失業を考慮したモデルを検討した。動学的な就業選択モデルでは年齢に依存した参加税率が導出され,シミュレーション分析により現役世代と高齢世代では再分配政策は異なり,現役世代に対してのみ負の参加税率を設定すべきことが示された。また,人的資本投資を考慮したモデルでは,労働所得税の人的資本投資へのゆがみを緩和するための資本所得税の役割が明らかになった。
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