研究課題/領域番号 |
15K17074
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
古村 聖 名古屋大学, 高等研究院, 助教 (30735783)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 家計内交渉モデル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は公的年金制度が持つ所得再分配機能について、夫婦の交渉による家計内資源配分に焦点を当てて解明することであった。これを受けて本年度における研究実績は主に二つあるといえる。第一に、本研究の主たる目的である公的年金政策をはじめとする世代間所得再分配政策分析に夫婦間交渉という意思決定プロセスの導入を図るための基本モデルを構築するに至った。複数の世代を扱うモデルに、夫婦の交渉による家計内資源配分を取り入れた理論モデルによって、世代間および世代内の再分配政策に対する家計の反応や家族制度の維持可能性に与える効果を議論することができた。 二つ目の研究実績は家計内交渉モデルの理論研究を補完する形の実証研究として、本研究が分析対象とする個人レベルの貧困やそのリスクを軽減する役割を持つ生命保険や地震保険需要について独自のアンケート調査を実施し、世帯の保険需要が世帯を意思決定主体の単位とするのではなく、家計内交渉モデルが想定する夫婦が異なる目的を持ちながら、話し合いや交渉によって選択を行っているという状況を支持することができた。 これら二つの研究成果を通じて、実証研究の結果から世代間関係や再分配問題をを考える上で、家計内の意思決定プロセスを考慮することの重要性を再認識し、理論研究によって今回構築した基礎モデルをもとに次年度以降の予定している現実社会に利用される具体的な再分配政策分析への拡張が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
在外研究の機会を得たため、当初の研究計画の順番を早めてアドバイスを受ける予定であったフィレンツェ大学のAlessandro Cigno教授とAnnalisa Luporini教授と家計内交渉モデルを取り入れた共同研究を開始した。共同研究の結果として、家族制度と社会保障の関係について検証を行うことができた。その他、家計内交渉モデルに基づく理論・実証分析も研究成果としてディスカッションペーパーにまとめ海外雑誌に投稿するなど順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように研究の予定を変更したが、研究遂行を行う上で問題はなく、今後このモデルを基本モデルとしてさらなる拡張を行う予定である。今後は共同研究を継続する上でFace to Faceが難しくなるため、スカイプによる打ち合わせや6月に当該論文を発表する国際学会European Society of Population Economicsに参加し、直接打ち合わせを行う。並行して家計内交渉モデルに基づく他の分析研究も継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
科学技術人材育成のコンソーシアムの構築事業の育成対象者に選出していただからである。昨年度はプログラムの一環として研究留学を行った。海外では、予算執行が難しかったため、帰国時に限定して利用した。さらにプログラムの助成対象者はスタートアップ経費を与えられていたため、スタートアップ経費の支払いが終了し研究費が必要となる次年次以降に予算を残した。
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次年度使用額の使用計画 |
フィレンツェ大学のCigno教授およびLuporini教授と新しい研究を開始したため、Face to Faceの議論が必要となる。これらのために旅費として計上する。
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