研究課題
本研究の目的は、地域ごとに医療機関に過剰診療が存在するかどうかを検証することである。具体的には、申請者が実施に関わった独自の家計調査データを医療経済学の手法を用いて分析し、各地域に過剰診療が発生している可能性の有無を明らかにする。人口高齢化により、わが国の医療費は急増が見込まれており、医療費の無駄を省くことにかつてない程注目が集まっており、本研究が果たし得る社会的意義は極めて大きい。また、本研究は、政府の対策に対しても補完的である。すなわち、政府は、全国に蓄積されたレセプトデータを分析して、都道府県に医療支出の数値目標を提示する方針を示しているが、レセプトデータのみによる費用対効果の分析は、医学的なニーズに偏重する結果を生む。人の受診行動には、身体の状態のみならず、その人の収入や家族構成、老後の生活不安の大きさ等の社会的要因が含まれており、レセプトの分析のみで定められた数値目標は、患者の社会経済的背景を考慮しないものになる危険性がある。したがって、本研究はこうした政府の方針の不備を補い、医療経済学的な見地から、政府の検討を補完する政策的示唆を提示し得るのである。平成27年度の研究は極めて順調に推移した。申請者が使用するアンケート調査の内容についてあらかじめ熟知していたこともあり、早々に分析をすすめて、当該テーマに関する論文を書き上げることができた。平成28年度以降は当該論文の分析精度に磨きをかけ、国際誌からの発行を目指す。また、平成27年度は、テーマの複雑性を鑑み、過剰診療に影響を与える周辺領域の研究をも開始した。具体的には、個々人の通院行動に影響を与える、人々の老後の不安に特に着目し、日本や諸外国のデータを用いた、老後の不安要因に係る研究を発展させた。
1: 当初の計画以上に進展している
研究実績の概要に示した通りである。
本テーマには、高齢社会における社会経済の複雑な事象が影響を与えている。今後は、過剰診療の有無を特定する分析のみならず、医療費の増減に係る、人々の老後の不安、介護行動等の周辺領域にも分析の対象を拡大し、翻って元のテーマの分析の精度をあげる作業に順次取り組む予定である。
旅費の支出が予想よりも下回ったため。
所属が異動となり、共同研究者との打合せに必要な旅費が増えたので、繰越分をそのために使う予定である。
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Journal of Women and Aging
巻: forthcoming ページ: forthcoming
10.1080/08952841.2015.1138048
Review of Economics of the Household
10.1007/s11150-015-9310-0
生命保険論集
巻: 193 ページ: 103-120
http://home.hiroshima-u.ac.jp/ykadoya/