大阪大学GCOEプログラム「人間行動と社会経済のダイナミクス」が実施した『くらしの好みと満足度についてのアンケート』の日本調査と米国調査のパネルデータを使用し、非認知能力と行動特徴が賃金や昇進に与える影響実証的に明らかにした。特に非認知能力が教育の成果や就業形態、報酬制度の選択にどの程度影響するのかを確認し、それらの経路を通じて間接的に賃金などに影響するのか、直接的に影響するのかを実証的に明らかにした。非認知能力は、既存研究に沿って、性格5因子(外向性、協調性、勤勉性、情緒不安定性、経験の開放性)で測定し、それ以外には基本的な個人属性を用いた。
分析結果は、学会、研究会でのコメントを受けて改訂し、査読付国際学術雑誌であるJournal of the Japanese and International Economiesに投稿して、出版された。主な内容は以下の通りである。日本では協調性が教育年数や賃金に重要な役割を果たすが、米国では協調性は男性の所得に負の影響を与える。このことは、協調性が男性の教育の年数に対しても、所得に対しても正の影響があった日本とは反対の結果だが、大企業勤務の男性では、協調性の負の影響が消え、ゼロに近いが正の影響が観察された。これは日本の結果と似ている。
最終年度には、非認知能力に重点を置いて(非)認知能力が学校教育を通じて変化しそれが労働市場の成果に影響を与える可能性について、より厳密に調査するために独自でアンケートを行い、分析した。非認知能力の形成に与える影響の一つとして留学の経験に注目をすると、いくつかの非認知能力について、中学生時代から現在への非認知能力の成長度合いが、留学未経験者とくらべて留学経験者の方が大きいことが確認された。このパターンは、語学研修以外の留学(例えば、交換留学、学位習得)に限定しても類似であった。
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