本研究は4つの研究成果・研究論文に発展した。第一に、自治体病院の廃止・縮小の影響の研究であり、第二に、そこから派生した、診療報酬改定を利用した自治体病院の供給ショックの研究であり、第三に、(介護施設の立地を含む)介護保険導入効果のマクロ的影響の研究であり、第四に、イベントスタディや空間パネルデータ分析における統計的因果推論手法の拡張を利用した自治体の医療保険財政の相互参照行動の研究である。
第一の研究については、ワーキングペーパー(以下、WP)化は完了していないがデータを拡充しながら2000年代以降の補助金削減を利用した自治体病院の廃止・縮小・統合の影響の研究を進め、本年度中のWP化と論文投稿を目指している。本研究では自治体病院への補助金の減額およびそれによる自治体病院の廃止・縮小・統合などが地域の受療行動や健康などに与えた影響を明らかにしている。第二の研究については、H29年度に2回の学会報告を予定しており、その後にWPとして公開して投稿作業に入る予定である。本研究では、診療報酬改定により看護師増を誘導された病院において看護師の給与水準等がどう変動したのかの検証を行っている。第三の研究については昨年度に学会発表やセミナー報告を3回行い、今年度も1回の学会報告を予定しており、その後にWP化して投稿する予定である。本研究では介護保険導入やそれに伴う居宅・施設サービスの拡充が女性労働供給や医療支出等に与えた影響を国別パネルデータと擬似実験的分析手法を用いて明らかにした。第四については昨年度にWPを公開し、現在、準トップフィールドレベルの英文ジャーナルにて改定要求がでている。本研究では自治体の国民健康保険の保険料水準の相互参照行動を擬似実験的手法で識別している。これら4つの研究成果はいずれも査読付英文雑誌への掲載という形でプロジェクトを完結させる予定である。
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