研究課題/領域番号 |
15K17093
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
中村 周史 中央大学, 総合政策学部, 准教授 (70612571)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 国際金融 / 信用収縮 / 労働市場 / 為替変動 |
研究実績の概要 |
本研究は、国際金融市場を通じた資本フローが新興国経済、特に労働市場と物価に対して直接的・間接的に与える影響を理論と実証の両面から明らかにし、こうした脅威に直面した経済が採るべき金融政策についての示唆を得ることを目的とするものである。 平成27年度は、労働市場を含む開放経済モデルの構築と、世界金融危機時に先進国が実施した量的緩和政策が新興国へ与えた影響の実証研究を行った。前者については、小国開放経済の動学的一般均衡モデルに、Gali (2011)に従った名目賃金の粘着性により生じる可変賃金マークアップが生み出す失業を導入することでモデルの構築を行った。後者については、危機時における先進国の金融政策が国際金融市場を通じて新興国経済へ与える影響を調べるため、先進各国の量的緩和政策の識別を試み、それが国際金融市場を通じて新興国通貨価値へどのような影響を与えたかを符号制約を課したベクトル自己回帰モデルとダイナミック・ファクター・モデルを組み合わせることで分析した。その結果、米国の量的緩和政策が世界の新興諸国の名目実効為替を平均的に増価していることを明らかにし、その程度は新興国の金融変数や政策スタンス、地域に依存することを示した。本年度の研究成果は学会で報告し、その成果の一部は1編の論文として学術雑誌へ投稿している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していた目標である「実証分析と基礎となる理論モデルの構築」は並行して実施できており、研究計画は当初予定通り進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、現在構築したモデルに更に摩擦を加えて拡張する作業へ移行する。また、実証研究についても拡張を加え、国際金融市場を通じたマクロ経済への影響を一層明確にし、頑健性の確認を行っていく予定である。その過程では国際コンファレンス等でコメントを貰い、適宜修正と確認作業を行うことも含む。既に国際コンファレンスや複数の学会に報告申請を行っており、こうした機会を出来るだけ多く作ることで修正を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入した書籍の請求が年度を跨いだため。
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次年度使用額の使用計画 |
既に全額執行済み。
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