研究課題
若手研究(B)
本研究では、国際金融市場を通じた資金フローが新興国経済、特に交易条件の変化を通じて労働市場に対して与える影響を分析した。分析の結果、新興国における為替変動の物価に対する浸透率が低い場合、一時的な国際金融市場のショックであっても実質賃金の調整はゆっくりと行われるため、持続的に失業率の上昇が生じることが示された。これは、政策当局はマクロ経済の安定化のため、国内の労働環境の摩擦だけではなく、浸透率も考慮した政策運営を行う必要があることを示唆している。
国際マクロ経済学
本研究の主たる貢献は、国際金融市場における資金フローの変化が、新興国経済の労働市場に対してどのような影響を及ぼすかを定量的に分析したことにある。これは国際金融の分野では殆ど議論されてこなかったテーマであり、昨今の先進国における金融危機が新興国経済の労働市場に長く深刻な影響を与えてしまう仕組みに対する理解と、それに対する政策的な対処を与えるものである。