2017年度はひきつづきオープンマクロ経済学や国際金融論におけるパズルの解明をするため、主に計量分析の観点から行った。特に、パズルの一つであるFeldstein-Horioka Puzzleを理解するための分析を主に行った。Feldstein-Horioka Puzzleとは、金融自由化が進むにつれて貯蓄と国内投資の相関が下がらないといけないのに、実際には下がらなかったことでパズルとして知られるようになった。 本研究では、Feldstein-Horioka Puzzleの解明のために様々な実証分析や研究活動を行った。推計の主な軸としてウェーブレット(Wavelet)分析を用いて、そこに伝統的な経済学のツールであるファクター(Factor)分析・主要因分析などを結合させた。それにより、国際的な共通要因が各国のFeldstein-Horioka Puzzleにどう貢献するかを見ることができるようになった。 研究論文の改善のために、日本経済学会やAmerican Economic Associationなど国際的なコンファレンスに参加し、著名な研究者達と沢山意見交換を行った。また、King's College LondonのAssistant ProfessorであるEvangelos Dioikitopoulos氏をお招きし、研究発表をしてもらい、また研究打ち合わせをした。 東北学院大学経済学部の准教授である舟島義人氏と共著論文作業を行った。特にウェーブレット分析を、経済学部分野で主に使われる計量モデルにどのように取り入れるかについて様々な情報交換を行った。最終的には、「On the Sources of the Feldstein-Horioka Puzzle across Time and Frequencies」のタイトルの研究論文を完成させた。本論文は、ウェーブレット分析と計量分析を交えて、Feldstein-Horioka Puzzleの原因を明らかにしたものである。出来上がった論文を英文校正を済ませて、著名な国際ジャーナルに投稿した。現在その論文は、Revise and Resubmitの状態である。
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