研究課題/領域番号 |
15K17097
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
高阪 勇毅 福山大学, 経済学部, 講師 (60632817)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 株式分割 / 市場流動性 / 投資家行動 |
研究実績の概要 |
本研究では2006年以降に株式分割を行った銘柄をもとに、株式分割実施前後での流動性の尺度(売買代金、約定件数、ビッドアスクスプレッド、株主構造など)を計測し、株式分割実施による流動性の改善効果と銘柄属性の関係性を実証する。東証は2014年4月に「売買単位の集約」を実施し、上場企業の自社株の最小購入金額低下策は「株式分割」のみとなった。そのため、株式分割実施に伴う流動性への影響は経営者・実務家の関心が強い。一方、学術的な研究は乏しく、日本特有の制度問題もあり、十分な実証結果は得られていない。そのため、株式分割の流動性への影響を実証する価値は高く、本研究の果たす役割は大きい。 本研究では、流動性の尺度として、「取引の容易さ」の指標となる「取引量」と「スプレッド」を利用する。そして、投資家、上場会社、取引所の3者が株式分割によって受けるメリット・デメリットを、株式分割実施企業の銘柄属性も考慮した実証結果から提示する。 平成27年度は、データ整理、計算作業を中心に取り組み、株式分割実施前と実施後での各流動性尺度の比較を行った。その結果、株式分割実施後に大きな流動性の変化を発見できた。この結果は有意な変化の見られない欧米市場での結果と大きく異なる特徴的なものである。現在、この結果を論文にまとめているところである。 今後は、学会発表・セミナー発表などを通じて、関連分野の研究者の方々からの示唆も参考に、雑誌投稿を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
所属機関の変更に伴い、研究環境が大きく変わったため、当初予定していた研究時間の確保が困難であり、計画遂行に支障があった。しかしながら、事前に用意していた計算プログラムを有効に活用できたため、長時間を想定していたデータ整理・加工・分析作業を大幅に短縮でき、現在の進捗に至っている。今後も研究時間の十分な確保が困難な状況ではあるが、研究計画を遅らせないように努めたい。
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今後の研究の推進方策 |
論文の執筆、投稿と本計画の次の研究成果のための分析を進める。とくに、現時点での計算処理の頑健性、分析結果の頑健性を高め、株式分割実施による流動性の改善効果と銘柄属性の関係性を実証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関が変わり、データベースの新規購入が必要なため。
所属機関が変わり、データベース環境が整っていないため、利用予定だったデータベースを利用するためには、新規に購入しないといけない問題が発生した。非常に高額なデータベースであるため、科学研究費だけでは一部しか充足できない状態であった。また、そのデータベースの有無が研究の死活問題でもあった。現在は、他の低額の代替的なデータベースを利用することで分析標本期間の大半を代替できているが、依然として一部の標本期間が欠落しており、完全には解決できていない。そのため、一部の標本期間については、新規データベースの購入で補充するために、平成27年度交付額を次年度使用額として使用予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し額923,680円は、平成28年度交付額と合算して、日経ティックデータ(1年35万円)3~4年間分の購入を計画している。ただし、現在、別の手段(他大学他機関の客員研究員への着任)による研究環境の整備も進めており、データベース購入の必要性を回避できれば、当初の計画通りの物品調達に充てる。
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