研究課題/領域番号 |
15K17098
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
青野 幸平 立命館大学, 経済学部, 准教授 (20513146)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 非伝統的金融政策 / 株式市場 / 産業別分析 / 原油価格 |
研究実績の概要 |
コール市場で取引されているコールレートの中で「無担保翌日物」と「無担保翌々日物」に着目し,反映されている情報の差に着目した分析を行っている。つまり,翌々日に取引される金利について,今日の時点の情報は両方のコールレートに反映されているが,明日の時点の情報は,「無担保翌日物」には反映されているのに対し,「無担保翌々日物」には反映されない。この事実を利用し,コールレートの変化について「予測されていた変化」と「予測されていない変化」に分割させた上で,金利の変化が株価・実体経済・石油価格等に与える影響について考察してきた。日本銀行が政策手段を「金利」から「資金供給量」に変化させた「非伝統的金融政策」を考察する上でも,「長期金利」との関連から「金利」の変化に注意を払っていたことが窺える。 非伝統的金融政策を含む金融政策が株価や実体経済に与える影響を考察する際には,経済全体への影響だけではなく,各部門ごとに異なる影響を与えている可能性を考慮・分析する必要がある。この点に関連した分析について「多部門モデルを考慮した金融政策の効果」というタイトルの論文をDiscussion Paperとして刊行し,現在投稿へむけた作業を行っている。 株式を金融資産ととして捉えるならば,原油価格などとの関係も重要になる。原油価格の動向も実体経済や株価に対して大きな影響を与えている。その点を考慮・分析するために,昨年度より継続して“Oil shocks, Exchange Rate Shocks, and Japanese Stock Market”という論文を共同研究を継続し,日本金融学会・Monetary Economics Workshopでにおいて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は,学内において予定外の業務を担当する事になり,本研究課題を遂行するために十分な時間をとる事が出来なかった。また,現在進行中の金融政策について分析しているが,ここ数年においては株価に影響を与えると思われる「金融政策(非伝統的な金融政策)」以外の要因(貿易関連・地政学的リスクなど)が非常に多く,どの時点までを分析する必要があるのか,どの要因まで考慮する必要があるのかを考察するのに予定以上の時間を割いている事も研究課題の進捗がやや遅れている原因である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も,昨年度までの遅れを取り戻すべく,「EPSフォーキャスト調査」等のサーベイデータの整理を早い段階で終わらせた上で,既に整理を終えているコールレート関連のデータ・産業別株価指数・石油価格・為替レート等のデータを用いた時系列/パネル分析を行う。すでにDiscussion Paperとして刊行している「多部門モデルを考慮した金融政策の効果」については早い段階で英文に変換した上で学術雑誌に投稿する。その上で,Caballero, Hoshi, and Kashyap(2006)の「ゾンビ企業」等の存在を考慮した分析も行っていく。特に,非伝統的金融政策実施以降のゾンビ企業の動向に着目した分析を行っていく。 また,本研究課題における目的を達成するためには,2016年9月に導入された「長期金利誘導」についても,非伝統的金融政策の1つとして分析対象に含めるべきであると判断し,新たにデータの収集等を行いながら,分析を進めていく。さらに,為替レートについては予備的分析において金融政策変数が与える影響は限定的であることが分かっているが,この結果が直近のデータにおいてどのように変化しているのか変化していないのかについても分析を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 2017年度は学内において予定外の業務を担当する事になったために,夏休みに予定していた海外の学会への参加が出来なくなったこと,さらに,2016年9月に日本銀行が新たに導入した長期金利誘導に関する分析に必要なデータ等が購入出来る段階になかったことが理由で直接経費の繰越が生じた。英文での論文執筆が遅れているために,英文校閲等に利用する金額についても直接経費の繰越が生じた。 (計画) サーベイデータを整理するRAの雇用に10万円,統計ソフトの更新などに5万円,昨年度参加出来なかった海外学会への参加費・渡航費として25万円を使用する計画である。
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