研究実績の概要 |
「研究の方法」で掲げた3つの課題に即して、以下、研究成果について説明する。 第一の点に、和村産業組合の「信用程度表」を利用して、小島庸平・高橋和志「戦前日本の産業組合における信用審査の実態と開発途上国への含意―長野県小県郡和産業組合を事例として―」(『アジア経済』58(2)、2017年6月、pp.11-46)を執筆した。 第二に、和産業組合の初代組合長を務めた深井功の子孫に当たる深井淑氏から、思いがけず同氏所蔵の史料を整理する機会を与えて頂き、2017年9月には研究代表者も加わった和村深井家文書調査会編『深井淑家文書目録』の第一集を刊行することができた。史料整理の過程で、小諸藩で家老職を務めた牧野八郎左衛門家文書が深井家に伝来していることも確かめられ、同文書群もまた優れた史料的価値を有しているものと判断されたため、前記目録にその一部を収録している。こうした史料を利用して、Y. Kojima, ‘Interlinked Transactions under Tenancy System: A Case from Meiji Japan’, CIRJE-F-1079, March 2018を執筆し、現在、同論文を国際雑誌に投稿中である。 第三の点に関しては、小島庸平「戦前日本の都市家計に対する小口信用資金の供給主体─1930年代の東京市を中心に」『経済学論集』80(1・2合併号)、2015年7月、pp.91-109、および小島庸平「都市家計によるリスク対応と資金貸借」加瀬和俊編『戦間期日本の家計消費─世帯の対応とその限界』東京大学社会科学研究所、2015年の2点の成果を挙げることができた。また、2017年度後半より戦後の消費者金融企業の急速な成長の背景についても検討を開始し、2018年度の政治経済学・経済史学会の共通論題報告の一つとして報告を行うことが決定している。
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