本研究は、満洲を旧支配地域(関東州,満鉄附属地)と新支配地域(満洲国)とに区分し,両地域の経済関係の変化の分析から、満洲地域の経済が1932年の満洲国建国によっては容易に変化せず、戦時期に地域経済としての変化,および日本や朝鮮とのいわゆる「対外関係」にも変化が生じてきたことを明らかにした。こうしたセミマクロな地域設定を導入した分析は,既存研究でおこなわれてきた「日本」「朝鮮」「満洲」などのいわゆる「一国」的な次元での関係性から描く日本帝国に対する歴史像をより豊かにすることにつながるとともに,依然として対立しあう今日の東アジア内の歴史認識にも新たな視座を提供する可能性をもつものと考えられる。
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