研究課題/領域番号 |
15K17103
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
橋口 勝利 関西大学, 政策創造学部, 准教授 (00454596)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 企業合併 / ガバナンス / 工業化 |
研究実績の概要 |
本研究は、中京圏の産業化に企業者がいかなる役割を果たしたのかを明らかにすることである。現在中京経済圏は、名古屋を中心に日本屈指の製造業拠点としての存在感を強めていることから、その歴史発展要因の解明に注目が集まっている。 本研究は、この中京圏の成長要因を歴史的視点から解明する試みである。具体的には、奥田正香を対象にして、明治後期から大正期にかけての中京圏における近代産業の発展を担った企業家たちをとりあげ、それぞれの関わった事業およびその行動、それらをとりまく企業家ネットワークについての具体的な検証を試みる。そして、このような検討を通じ、中京圏の産業化の進展と中京財界のネットワークおよび中央財界との関係についての一端を明らかにすることができる。 ”名古屋の渋沢栄一”とも称された奥田正香は、その経済活動の展開や中京圏の産業化に中心的な役割を果たし、奥田を軸に「土着派」、「近在派」、「外様派」各派の企業家たちが入り組みながら中京圏の産業化が進んでいった。明治後期から大正初期にかけては、奥田系企業が拡大の過程をたどり、その後は衰退を迎える。この具体的推移を、三重紡や名古屋電力、日本車輌製造の事業展開の検討を通じて明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中京圏で企業合併・買収を積極的に進めた奥田正香についての企業家活動については、史料収集および分析をほぼ終えて、2016年6月の社会経済史学会全国大会で学会報告を実施した。その報告の際には、質疑応答を通じて、さらなる企業分析の必要性が浮かび上がってきた。具体的には、紡績業だけでなく、織布業への展開、または電力業やガス事業へも拡張することで、近代日本の企業合併を体系的に明らかにすることができよう。現在は、その成果を纏めるべく、学会投稿論文を作成している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、これまでの調査・学会報告を踏まえて投稿論文の作成に取り掛かる。具体的には、まず、奥田正香が中京圏財界のリーダーシップを握り、中京圏の工業化を進めていく過程を取り上げた論文。次に、奥田が強く関与した三重紡績が、中京圏の中小紡績企業を合併するプロセスを解明した論文を作成する。 これらの論文を体系的にまとめて、近代日本の企業買収・合併を歴史的に解明していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、調査対象として、紡績企業に加えて、川下部門である織布業への調査が発生したため、その史料収集やインタビュー調査に旅費が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度も、中京圏への調査活動を継続的に実施していく。史料撮影やその複写に要する費用が発生する予定である。加えて、2017年に実施される社会経済史学会全国大会が慶応大学三田キャンパスで実施されるため、東京への出張旅費がいくつか発生する予定である。
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