研究課題/領域番号 |
15K17105
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
大倉 邦夫 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (60634722)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ソーシャル・ビジネス / 組織間関係 / アライアンス / 企業の社会的責任 / 経営学 / 社会的協働 / 社会的アライアンス / 協働マネジャー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、複数の企業やNPO が各々の経営資源を持ち寄り、地球環境問題・貧困問題・少子高齢化問題などのいま解決が求められている社会的課題の解決に取り組む「社会的協働」という事業形態を、円滑にかつ効果的に展開するためのマネジメントの問題を考察することである。 本研究の具体的な目的は、詳細な事例研究を通じて、(1)事業の計画段階、実行段階、成果の評価段階という一連の社会的協働の展開プロセスの各段階において、留意すべきマネジメントの諸問題を明らかにすること、(2)社会的協働の管理運営を担う「協働マネジャー」というヒトに着目した上で、マネジメントの諸問題に対する協働マネジャーの役割を解明すること、の2つである。 平成28年度は、前年度の研究・学会報告を踏まえ、協働マネジャーの役割を分析するためのフレームワークについて検討した。具体的には、協働マネジャーに着目した研究として、組織間関係論の先行研究をレビューした上で、「協会連結者」、「組織間学習のプロセス」、「アライアンスの専門的職能」という概念を分析のための鍵概念として設定した。例えば、境界連結者とは、組織と組織をつなぎ、オープンなコミュニケーションを通じて、信頼関係を構築したり、組織内外の関係主体のコミットメントを引き出していくような役割が求められる。こうした概念は、複数の組織との協働関係を管理運営していく協働マネジャーの役割を分析する際に援用できると考える。 また、平成28年度は『人文社会科学論叢』第2号(2017年2月発行)にて、本研究のフレームワークの概要を整理した論文を成果として発表した。論文の題目は「社会的協働における協働マネジャーについての研究の動向」である。 以上が平成28年度の研究実績の概要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、平成27年度~29年度の3年間を通じて、協働マネジャーの役割に着目し、社会的協働を円滑にかつ効果的に展開するためのマネジメントの問題を考察することを目的としている。 平成27年度~28年度は本研究が設定した問題を分析するためのフレームワークを検討する期間として設定しており、この点については順調に進展している。平成28年度の研究実績の概要に記した通り、「協会連結者」、「組織間学習のプロセス」、「アライアンスの専門的職能」などを協働マネジャーの役割を分析するための鍵概念に設定することができた。 また、平成28年度はこうした理論研究に加え、事例研究の準備を進めることも計画していた。本研究は、繊維製品の廃棄物問題という社会的課題の解決に向けて、繊維製品のリサイクル事業を展開した、株式会社エコログ・リサイクリング・ジャパンによる「エコログ・リサイクリング・ネットワーク」を社会的協働の事例として取り上げている。本格的な事例の調査は平成29年度に予定しており、平成28年度は同社の担当者に電話や電子メールにて、平成29年度の調査の概要や方向性について説明した。その結果、平成29年度のインタビュー調査の実施についての承諾を得ることができた。 以上の点を踏まえ、平成28年度に計画していた研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は以下の通りである。 平成28年度に設定した本研究のフレームワークに基づきながら事例研究に取り組んでいく。具体的には、株式会社エコログ・リサイクリング・ジャパンによる「エコログ・リサイクリング・ネットワーク」の立ち上げや管理運営に現在も関わっている同社の担当者へのインタビュー調査を予定している。特に、同社がどのようにして他の組織を巻き込みながら事業を展開していったのかという事業形成のプロセスや、他の組織との関係性をマネジメントしていったプロセスについて調査を行っていく。 また、平成29年度は事例研究を踏まえ、これまでの研究成果を取りまとめ、論文等を通じて発表していくことを計画している。
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