研究課題/領域番号 |
15K17107
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
牧 良明 茨城大学, 人文学部, 准教授 (00554875)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生産システム / サプライヤーシステム / グローバル生産 |
研究実績の概要 |
ヒアリング調査においては、日立オートモティブシステムズ(株)の工場長、OBを対象に行った。日立オートモティブシステムズは、その設立過程で(株)日立ユニシアオートモティブ、トキコ(株)と合併しているが、ヒアリングを行った方の中にはトキコ出身の方もおられ、3社合併の経緯に関しても詳しく話を聞くことができた。ヒアリングによる発見事項は主なもので下記のものがある。①日立自動車部品事業(佐和工場)におけるSAPSと呼ばれるトヨタ生産システムに類似した生産システム改革は、カーメーカー主導によるものではなく、日本能率協会の指導によってなされたものであった。②3社合併は、現場レベルではライバル同士の合併として、非常に驚きをもって受け止められた。③3社は主な取引相手が異なっており、そのため、生産システム上の違いがあり、それを統合するために一定の年月が必要であった。④現在の日立オートモティブシステムズのグローバル生産体制構築のために、大幅な組織改革が行われた。⑤グローバルな情報共有を行うための情報集約システムが構築された。 また、文献調査においては、戦前~戦時期における日立製作所自動車部品事業の日本自動車産業に対して果たした意義が見出された。具体的には、①三輪自動車の発展過程において日立自動車部品事業は、全社的支援を受けながら技術蓄積を行った。②自動車製造事業法以降、許可会社3社すべてに電装品を供給することとなった日立製作所は、アメリカフォード工場を視察し、大量生産システム構築の改革を行った。 以上、ヒアリング調査及び文献調査から、戦前から現代にいたる日本自動車産業発展の中で日立製作所の自動車部品事業が果たした役割をとらえる視点が整理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今期は、国内のヒアリング調査及び文献収集・調査を目的としていたが、それぞれに実施し、重要な発見事実があった。今期は、主に現在のグローバル展開に関する調査をヒアリングによって、過去の調査を文献調査によって行ったが、そうすることによって、日立自動車部品事業を通史的にとらえる視点を得ることができた。 ヒアリングに基づく調査においては、とりわけ、日立自動車部品事業のグローバル展開の実態と、その中でのグローバル分業体制の構築、およびグローバルな情報共有の仕組みについての重要な聞き取りを行うことができた。 文献調査による歴史研究においては、戦前・戦時期における日立自動車部品事業の成立過程を考察・整理した。戦前から戦時期にかけての、自動車産業の自立化の背景に、日立製作所による電装品開発・生産体制の構築があったことの発見は、日本自動車産業の歴史的生産体制構築を論じるうえで、重要な意味を持つと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
FOURINなどの主要な統計資料は入手したが、本格的な分析・検討には至っていない。ヒアリング調査によって発見した現在の動向を統計的に捕捉すべく、統計資料の分析を進める。また、28年度の計画としているサプライヤーへのアンケート調査も実施する。なお、県内サプライヤーへのアンケート調査に関しては、茨城県およびひたちなかテクノセンターとの協力する方向で調整しており、それによって、アンケート回収率の向上と、アンケートおよび研究成果の社会的還元も図りたいと考えている。 27年度の研究によって明らかとなったことを学会報告・論部発表等によって公表する。 加えて、今年度は中国調査を実施することを計画している。これまでのヒアリング実績を中心に、新たな関係構築も行いながら、中国でのヒアリング調査を実現する。 28年度を通して、戦前から現在に至る日本自動車産業の歴史的発展のなかでの日立自動車部品事業の位置付けを整理し、29年度の成果の集約に向けた基本的視点を確定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
まず、ヒアリングを、日立オートモティブシステムズ成立過程で合併した、日立製作所佐和工場、日立ユニシア、トキコの各出身者から行う予定をしており、こうしたヒアリング対象者が県外におられると想定していたが、赴任等で県内居住されていることがわかり、県外ヒアリング調査の費用が、今年度に関しては必要なくなった。 また、年度末においても、必要な文献が適時購入できるように、少し余分を見ていたところ、年度末までにすべての使用予定額を執行することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
まずは、27年度と同様、必要文献の購入費用に充てる。また、28年度はアンケート調査・中国調査など、費用の掛かる研究方法をとることを予定しているため、それらに充当する。
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