研究課題/領域番号 |
15K17110
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
尾田 基 東北学院大学, 経営学部, 准教授 (00709686)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ロビイング / 規制 / 法制度 / イノベーション / 事業創造 / 企業家 |
研究実績の概要 |
平成27年度の成果は2点にまとめられる。第1は事例の予備調査である。候補に挙げていた事例のうち,風営法によるダンス規制の事例と射幸性に関連する比較事例研究,民泊マッチングサービスに関する規制設計の事例の3事例について,入手可能な資料の入手を終え,分析を進めている。平成27年度に特に進展したのは,民泊サービスに関する制度変化の一連の状況に関する調査である。民泊に関連する制度設計は,規制設計を推進する企業側が戦略的に活動していること,さらに政権の意向も加わって非常に速いスピードで規制設計にまで至りそうな事例となっている。この事例の興味深いところは,明白に利害の対立するアクターが存在しながらもそれらの反対活動が十分ではないという特徴を備えていることにある。当初の仮説では推進企業側が様々な社会的ネットワークに依存して規制設計に参加するかしないかが決まってくると予想していたところ,他のアクターについても同様の傾向が見受けられることが発見事実として得られた。この事例は現在進行中であるため,これ以降の巻き返しがあるのかどうか等を含めて,今後のインタビュー等を通じて深い状況の理解に努めていく。なお,この事例の現時点での分析結果はひとまず学内紀要に掲載されることが確定されている。 第2の作業成果としては,既存研究の整理が挙げられる。定期的に意見交換させていただいているCIRIEC次世代研究部会「情報社会と政策形成研究会」の皆様のコメントのおかげで,概ねの分野と既存文献の状況が掴めた状況にある。この点に関しては1本の論文を国内誌に投稿中の他,もう1本分の切り出しが可能なので,執筆を急ぐこととしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
想定以上に進行した部分と想定未満であった部分の両方があるため,自己評価を「おおむね順調に進展している」とした。進展した部分については「研究実績の概要」欄に記載したので,以下には課題を3点挙げる。 第1の課題として,本来は聞き取り調査を平成27年度中にはインタビューを行っている予定であったが,十分な調査日程を組むことができなかった。学内各所のご協力を得ながら,ワークフローの見直しを行っていきたい。具体的には,東京に何らかの滞在拠点を作ることで,より調査のアポイントをとりやすい体制ができないか検討している。 二次資料に基づく調査が進展したことに伴って蓄積した実践知を明文化することが第2の課題である。本研究課題は平成24年頃から着想を得て進められている研究の一部分であり,昨年度の調査を踏まえると調査の深さに差はあるものの7事例ほどの蓄積を得た。調査を繰り返すうちにまず調べるべき部分についての勘所や,どのように進展する可能性があるかについての実践的な読み筋については4年前よりも大きく成長したと感じている。この実践的な暗黙知を,研究者だけでなく実務家にとっても問題理解を手助けする有益な枠組みとして提示することが課題である。この課題は事例間比較を行っていけば次第に解決できる見込みである。 第3の課題は因果的説明に関する理論構築の作業である。企業家の態度決定に関する社会心理学的側面や企業家が社会的コンテクストから受ける影響については未整理な部分が多い。現状は大学院の教科書レベルの理解にとどまっており,自身の研究に対してどのように利用可能であるのか,作業は進んでいない。また,事例側からの説明を組み立てようとすると今度はどんな事例でも説明できてしまうような反証可能性のない説明になってしまう問題に直面している。この問題は難度が高く,平成29年度にまでかかる作業であると現段階では認識している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は,前職の際に応募し,現在の勤務先への着任と同時に始まっている。現職の学内制度との関係で当初予定していた計画の一部を変更せざるを得ない部分が2点ある。第1に,講義担当において時間割の希望を出すことができない仕組みになっていることが研究計画時点とは大きく予想と異なっていた。研究時間は確保できるものの分散した時間割であるために,学期中には調査日程を組むことが難しい。アポイントの取り方の工夫や長期休暇期間中に調査ができるような作業設計を工夫する必要がある。2点目として,研究補助を担う人材の確保に難航している。学生アルバイトの時給の設定が最低賃金近くに設定されていることもあって優秀な人材を確保することが難しい。業務委託契約など外部人材の活用を検討中である。 理論研究と2次資料に基づく事例調査には進展が見られるので,実地調査に用いることができない時間でそちらの作業を先行させつつ,研究体制の立て直しを図りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
支出手続きの簡略さを優先し,少額を翌年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
残額は524円と少額のため,使用計画に変更を有するほどの影響はありません。
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