2017年度は、1)同一価値労働同一賃金や職務評価に関する代表的研究の整理検討、2)岡山県倉敷市の繊維中小企業における職務評価実践の可能性と人事管理の実態把握の2点を中心的に行った。第1に、賃金格差是正の手法としてみた場合、同一価値労働同一賃金の手法は従来のジェンダー格差を縮小する意図を持つ。近年では、労働組合や研究者を巻き込む形で、実践的な成果も蓄積されている。他方で、日本の賃金体系の多くは依然として労働者の属性を評価するヒト基準の賃金体系である。たとえば、役割等級制度は、企業が労働者に対して期待する役割を職責として、評価制度に組み込んでいる。それゆえ、ジョブ型を前提とする同一価値労働同一賃金の手法が、日本の代表的なヒト基準の人事制度と整合性を持つものかの検討が必要となる。職務評価による賃金格差是正の手法は、性別、雇用形態別格差是正に一定の効果を持つが、最低賃金の引き上げ、人事評価におけるジェンダー平等指標の組み込み等とセットになってはじめて有効に機能する。これらの諸点を労務理論学会やその他の研究会で発表した。 第2に、2018年2月19日~21日に、岡山県倉敷市のユニフォーム等関連企業に対する人事管理の実態調査を行った。ユニフォーム関連企業では、海外生産比率が高く、国内生産拠点の意義は、定番製品の迅速な供給など工場管理機能に限られる。聞き取り調査では、1)外国人技能実習生の受け入れ見直し、2)人事評価の透明性に向けた制度再構築、3)SNSなどを通じた縫製現場のトレーサビリティの確保、4)業界底上げの具体化などの特徴がみられた。今後は、具体的事例を整理する過程で、これら中小企業の取り組みがどれだけ普遍性をもつものであるか検討していく。
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