研究課題/領域番号 |
15K17118
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
笠原 民子 静岡県立大学, 経営情報学部, 講師 (40523189)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 国際経営 / グローバルタレントマネジメント / 国際人的資源管理 / 新興国 / 日本企業 |
研究実績の概要 |
本研究は,日本多国籍企業の本社及びそれら海外子会社(新興国)を研究対象とし,多国籍企業グループとしてどのようなグローバルタレントマネジメントが実践されているのかを明らかにすることを目的としている。それに際し,本研究では,1.制度論に依拠しつつ,日本企業におけるグローバルタレントマネジメントの内容を明確にし,2.海外子会社にて実施されているグローバルタレントマネジメントがどのように多国籍企業グループの競争優位に貢献しているのか,3.新興国に立地する日系海外子会社では,従来国際人的資源管理分野で指摘されてきた日本企業の抱える国際人的資源管理上の課題がどのように解決されているのか,あるいは同様の課題をどの程度,なぜ抱えているのか等を明らかにすることを目的としている。 平成27年度は,研究計画に示した通り,次年度以降の実証的考察に必要となる分析フレームワークの構築を試みた。それに際し,第1に,ジャーナル論文及び洋書文献を中心にグローバルタレントマネジメントに関する先行研究のレビューを行い,先行研究及び概念を整理した。第2に,先行研究のレビューをふまえて,日本企業本社及び新興国に立地する海外子会社11社,21名(経営幹部層)及び関連組織(9名)に対してグローバルタレントマネジメントに関する半構造化インタビューを実施した。その結果,考察対象とした新興国における日系海外子会社のグローバルタレントマネジメントは,本社というよりも,地域統括会社の管理下にあることから地域の影響を大いに受けて形成,実施されていることが明らかとなった。第3に,グローバルタレントマネジメント研究の最新の知見を得ることを目的に,国内外の学会へ参加し,研究報告を行う中で同分野の研究者と研究成果を共有すると共に,多くのアイデアを得る機会を持つことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,本社及び新興国に立地する日系企業を中心にグローバルタレントマネジメントの実態について調査を順調に実施することができた。今年度は,1.先行研究のレビュー及び概念フレームワークの構築,2.インタビュー調査の実施(本社及び新興国に立地する日系海外子会社)3.研究成果の報告を予定していた。研究成果の社会への還元という点では,2.インタビュー調査を通じて,日系企業におけるグローバルタレントマネジメントの実態に迫ることができ,同時にそれら調査協力企業に対しても研究成果の還元を行うことができたと考えられる。また,調査を通じて得られた知見は,国内外の学会に参加し,同分野の研究者と交流を深めるとともに,研究報告を行うことで少しは還元できたと考えられる。本研究成果は,平成28年度に開催されるAIB(Academy of International Business),AJBS (Academy of Japanese Business Studies)のCompetitive sessionにて報告が決まっている。以上のことから,おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に得られた結果を基に,次の3点について次年度以降研究を進めていく。第1は,日系海外子会社で実践されているグローバルタレントマネジメントの活動の内容を明確にすることである。具体的には,1)本社,海外子会社の文化的,地理的距離を超え,多国籍企業グループとして,本国籍人材,現地国籍人材,第三国籍人材の採用・配置,育成,評価,処遇がどのように設計され実施されているのか,2)タレント候補者の選別方法,3)拠点間異動を通じたキャリア形成及び協働促進に向けたグローバルタレントマネジメントの役割である。第2は,第1の活動内容を踏まえ,新興国における日系海外子会社を対象とした,グローバルタレントマネジメントに関するアンケート調査の実施である。可能であれば複数国(新興国)における日系企業を対象としたグローバルタレントマネジメントの比較分析を実施したい。第3に,第2と併せてアンケート調査から窺い知ることが難しいグローバルタレントマネジメント実施のコンテクストについて,日系海外子会社を対象にインタビュー調査を継続して行い,国際比較事例分析を行いたい。
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