研究課題/領域番号 |
15K17126
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
三木 朋乃 中央大学, 商学部, 准教授 (60508604)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 環境規制 / イノベーション |
研究実績の概要 |
本研究は、経営手法の流行現象がどのように起きるのかそのメカニズムを、特に環境に関する経営手法に限って調査し、明らかにしようとするものである。本年は、環境マネジメントシステムという民間主体の流行現象および、環境規制という強制的な流行現象を取り上げて、定性的および定量的分析を行った。 その結果、次のようなことがわかった。環境マネジメントシステム(EMS)を採用する企業は大きく二つにわかれた。一つのタイプはは、EMSのような経営手法をあくまでもツールと捉える企業である。こうした企業は、経営手法の採用によって見える化されることを知っており、見える化された数字や事実を事業効率化のためにいかし、結果的に多くのイノベーションを生み出していた。また、こうした企業はその他の流行現象(国際標準の普及や、品質標準の普及)なども好意的に捉える傾向にあった。もう一つのタイプは、経営手法の取得を目的とする企業である。こうした企業は、経営手法の事業活動への活用方法が見出せず、経営手法採用後に伴う書類作成や監査業務が重荷となってしまっていた。こうした企業はその他の流行現象も義務的に捉える企業が多かった。 環境規制という強制的な流行現象は、社内の正当性を高める役割を果たすために、予算が増大しやすい一方で、社外とのコミュニケーションが活発しやすい傾向にもあることがわかった。そのため、事業成果に結びつけるためには、プロジェクトマネジメントの重要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究目的は、経営手法の流行化現象のメカニズムを明らかにすることにあった。しかしながら、企業への調査を進める中で、経営手法の採用段階だけではなく、企業が経営手法を採用した後の成果の指標をも考慮することで、流行化メカニズムの本質に近づけることが分かってきた。そのため、当初の研究目的に加えて、企業の成果指標という新たな変数を加えて調査を進めているため、進捗状況は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、「企業の成果指標」の変数を入れて、追加的な定性的および定量的な調査を行っていく。企業の成果指標としては、公開データの使用を考えており、中でも特許データの使用を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
経営手法の流行現象を解明するために、経営手法を採用する企業へインタビューやアンケート調査を行ってきたが、調査を進める中で、企業の成果指標を考慮する必要性がでてきた。そのため、アンケート本調査を実施するためには、大幅な見直しが生じたため、アンケート本調査は未実施となった。そのため、次年度使用額が生じた。 本年度は、追加的な定性的調査をもとに、本調査の質問項目を作成し、本調査を実施する。また、アンケート結果は、企業の成果指標としての特許データを照らし合わせて、経営手法の採用とイノベーションとの関連性について解明する。
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