本研究は、経営手法の流行現象がどのように起きるのかそのメカニズムを、特に環境に関する経営手法に限って調査し、明らかにしようとするものである。本年は、環境マネジメントシステムの海外移転に関する定性調査、また国際標準化研究のレビューを改めておこなった。 定性調査の結果からは、次のようなことがわかった。 東欧の日経企業子会社を調査したところ、取得時期は早く、親会社と似通っていることが分かった。取得要因については、親会社からの影響は無視できないものの、ISO9000やISO14401が制定されたのがイギリスを中心とするヨーロッパ各国であったことから、周囲からの圧力であると考えることが妥当であることが分かった。よって、環境マネジメントシステムが国境を越える要因としては、親会社→子会社よりも取引関係のほうが強いことが示唆された。 この調査を、理論的な体系に照らし合わせて理解するために、最終年度の本年度は、改めて国際標準化研究のレビューを改めて行った。その結果、国際標準化研究に関しては、国際標準をどのようにして作るのかという開発段階の研究は多いものの、できあがった国際標準の普及に関する研究はあまりないことが明らかとなった。その理由としては、国際標準機関は非営利組織団体であるものの、世界各国からの代表が集まって標準を作るプロセスを経ているために、できあがった国際標準の取得は半ば強制的になるためである。しかしながら、「国際標準」とはいえ、流行現象になりやすいものもあれば、そうでないものもあるが、この点については既存研究では十分に議論されてこなかった。今回とりあげた、ISO14001は流行度合いという観点からみれば、非常に高く、こうした事例を対象に流行現象のメカニズムを追うことは、学術的にも実務的にも貢献度が高いことが示唆される。本研究の成果については、今後論文としてとりまとめ、国内外に発信していきたい。
|