研究課題/領域番号 |
15K17132
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研究機関 | 東洋学園大学 |
研究代表者 |
後藤 智 東洋学園大学, 東洋学園大学現代経営学部, 講師 (50732905)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | PSS / 標準化 / テクノロジー・エピファニー / 意味のイノベーション |
研究実績の概要 |
本研究は、技術的に標準化されたアーキテクチャを持つ製品が、サービスと組み合わさることで、市場での競争優位性を創出するメカニズムを明らかにすることが目的である。2015度の川村義肢の調査の結果明らかになった内容は、査読のある国際学会R&D Managementでの報告および、サービス学会、IJAMSへの論文投稿を行なった(現在査読プロセス中)。 2016年度は、2015度の結果から明らかになったことを発展させ、川村技師の標準化された技術がどのようにサービスを介して普及しているかという観点で分析を進め、その結果技術単体では製品の普及は進まず、サービスによる顧客との信頼関係が技術自体の普及にも大きく貢献することが明らかとなった。そのようなプロセスは、現在イノベーション分野で研究が盛んになってきた意味のイノベーションにおけるテクノロジー・エピファニーの概念として説明できることが明らかとなった。つまり、PSSは意味のイノベーションにも重要であるということを示唆している。 また、2016年度の成果を応用し、自動車シートメーカーとの一年間の実践的プロジェクトを行った。この目的は、そのメーカーがすでに持つ技術をサービスと組み合わせて、新たな競争優位性を創出することである。これは新たな技術研究ではなく、既存の技術を新たなサービスによって、再度競争優位性を与えられる可能性を探索したものである。 本結果は、6月に開催される査読のある国際学会Design Management Academic Conferenceに採択され、発表を行う。また、同時にJournal of Technology and Innovation Managementに現在投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、標準化されたアーキテクチャーとサービスの関係性にのみ焦点を当てていたが、分析を進める上で、意味のイノベーションにPSSが貢献する可能性が明らかとなってきた。これは、標準化された技術は、技術的な競争優位性を維持することが難しくなる可能性があるが、それに対して意味のイノベーションにより、標準化された技術であっても新たな競争優位性を創出できることを示唆している。 このような観点は、近年のイノベーション分野の議論において注目される意味のイノベーションに対する新たな示唆であり、同時にPSS研究のイノベーション分野への新たな理論的貢献と言える。 このように、当初の計画以上に新たなインプリケーションが発見されたことから、当初の計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、2016年度に引き続き、標準化されたアーキテクチャを持つPSSの意味のイノベーションへの貢献という観点から進める。なお、2017年度は研究最終年に当たるため、過去2年の研究成果をまとめ、論文投稿に特に集中する。 また、2016年度よりミラノ工科大学の研究チームとの本件に関するディスカッションを行なっており、イタリアにおける事例の分析も視野に入れる。さらに、本研究の成果として、2016年度に自動車のシートメーカーと一年間の実践的プロジェクトを行ったため、その結果もまとめ、論文を作成する。 以上まとめると、2017年度は以下のような点に焦点を当て、研究を進める。 ①研究成果のグローバル化(イタリアの事例への適用の可能性の探索) ②実践プロジェクトのまとめ ③本研究のまとめと論文化
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