最終年の成果として、英語著書一冊、英語論文一本、国際学会発表一回を行った。 その内容として、標準化型製品におけるサービスが、消費者の製品の意味の解釈プロセスに影響を与えることで、意味のイノベーションに貢献することを、理論的及びケース分析によって明らかにした。 近年、製品とサービスを統合してシステムとして提供するProduct Service System(PSS)の研究が盛んになってきているが、既存研究は工学的な視点から、製品とサービスをどのように効率的に設計するかという研究が行われてきた。本研究では、PSSは意味のイノベーションにこそ有効な設計思想であり、製品や技術の競争優位性を高める手段であることを実証した。 ケースとしては日本の下肢装具産業を取り上げ、革新的な技術が最初上市した時には、消費者にも同業者にもその技術を受け入れられることはなかったが、従来完全カスタマイズであった製品を標準化することでスポーツ用品のようなデザイン性を与え、さらにリハビリテーションをスポーツとして捉えたサービスを提供することで、大ヒット商品となった。加えて、当初その新技術を無視していた同業者や研究者もその技術の有用性を認め、その技術の有用性に関する研究が増加していった。つまり、新技術が消費者コミュニティにも研究者コミュニティにも受け入れられたのである。 このようなケースは、単に技術が新しくても消費者は受け入れず、消費者にとって意味のある技術が重要であることを示唆し、さらに意味を与えるためには、製品とサービスを統合して提供することが重要であることを示唆する。
|