研究課題/領域番号 |
15K17133
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
守 政毅 立命館大学, 経営学部, 教授 (00434704)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ネットワーク組織 / 企業家ネットワーク形成 / 構造的隙間 / 中華総商会 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、「ネットワーク組織の構造や特徴と企業家ネットワーク形成に関する研究」を行った。具体的には、ネットワーク組織の構造と活動を構成する要素、構造的隙間の橋渡しによる企業家ネットワーク形成に与える影響を変化させるモデレータの抽出と、中華総商会の組織構造と活動についてのデータベースをもとに、シンガポール、マレーシア、香港の3つの中華総商会について比較する実証分析を実施した。中華総商会は、華人企業(家)と業種別組織が主たる構成員となり、華人系団体、商工団体、社会団体、政府などとの緩やかな関係を幅広く持つ。そのような連結ピン組織が、国内・海外との組織間ネットワークを形成する活動を頻繁に行って、会員企業家が国内外との組織的、個人的ネットワークを形成できるチャネルと機会を提供している。以上の事から、中華総商会のネットワーク構築の度合いと組織活動の頻度は高いほど、ネットワーク組織に参加する華人企業家に対してネットワークの構造的隙間を橋渡しする、仲介の役割を果たすとの仮説を導出した。 以上の研究成果を、学術報告と論文執筆を通じて公表した。 【学会報告】1.「ネットワーク組織の活動による企業家ネットワークの形成に関する探索的研究。-アジアの中華総商会を事例に-」九州経済学会第66回大会(2016年12月3日、於:九州大学)。2.カンボジアの経済発展における華人ネットワークの役割(共通論題報告「中国経済の発展と華僑」)」東アジア地域研究会・神戸華僑華人研究会合同例会(2016年12月10日、於:神戸中華会館) 【論文投稿】1.守政毅(2016)「第6章 日中ビジネスの深化と中小企業の中国経営」松野周治、今田治、林松国編著『東アジアの地域経済発展と中小企業』晃洋書房。2.守政毅「ネットワーク組織の活動による企業家ネットワーク形成に関する研究」『九州経済学会年報』第55集(投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は、「ネットワーク組織の構造や特徴と企業家ネットワーク形成に関する研究」を進めてきた。当初の計画であった、先行研究のレビューと中華総商会の組織構造と活動のデータベースの構築をベースとした実証分析を通じた仮説構築及び論文作成についてはほぼ完了しており、その成果の一部について2回の研究報告を行っている。また、第1次質問票調査の準備について着手し、第1次質問票調査の準備とプリ・テストについてはほぼ完了した。 他方で、第1次質問票調査の実施と、第1次質問票調査の分析と論文作成と学会報告については十分に進めることができなかった。 その理由は、平成27年度に本研究計画の作成時点で想定していなかった学内役職業務が入り、研究・教育業務に対して過重な負担となり、当初計画の60%程度の進捗率となった。平成28年度は、平成27年度の計画分と28年度の計画分の50%までは進捗したが、前年度の遅れを十分に挽回することができなかった。平成29年度は研究フェードを当初計画より高め、進捗の遅れを挽回する計画である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、1.「ネットワーク組織の構造や特徴と企業家ネットワーク形成に関する研究」と2.「ネットワーク組織内の互酬性規範・信頼と企業家の社会関係資本の獲得に関する研究」から構成される。平成29年度は、前者の「ネットワーク組織の構造や特徴と企業家ネットワーク形成に関する研究」について完了させる。 1.については、平成28年度に予定していた第1次質問票調査と分析と論文作成と学会報告を実施する。質問票調査は、「世界華商大会」(2017年9月にミャンマーで開催)に参加する華人企業家に送付し回収作業を行う。質問票調査から得たデータを用い、仮説検定を行う。結果を検討し、論文を作成する。研究成果をとりまとめ、中国経済・経営学会等の国内学会で報告する。 2.については、まず先行研究をレビューし、インタビュー調査で補強しながら、企業家のネットワーク組織活動への参画・貢献度が、信頼関係の構築による社会関係資本の獲得を変化させるモデレータを抽出する。続いて、先行研究のレビュー及びインタビュー調査から、企業家のネットワーク組織運営への参画・貢献度と、信頼関係の構築による社会関係資本が獲得との関係に関する命題を導出する。また、インタビュー調査結果から論文を作成する。 なお、進捗状況が良好な場合は、2.についての第2次質問票調査を行い、得られたデータを用いて、仮説検定を行う。結果を検討し、論文を作成する。この第2次質問票調査では、ネットワーク組織内の規範に対して、華人企業家の中華総商会の組織活動への参画・貢献度合いが、社会関係資本の獲得に与える影響を明らかにすることを目的としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、「ネットワーク組織の構造や特徴と企業家ネットワーク形成に関する研究」の1.命題の導出と第1次インタビュー調査の実施、2.第1次インタビュー調査の結果の検討と仮説構築及び論文作成、3. 第1次質問票調査の準備とプリ・テスト、4.第1次質問票調査の実施、5. 第1次質問票調査の分析と論文作成と学会報告を行う予定であった。 しかし、平成27年度で生じた遅れを十分に挽回できず、4.、5.が実施できなかった。そのため、国内・海外でのインタビュー調査、質問票調査の実施にかかる予算の執行ができず、国内・外国旅費、謝金(専門的知識の提供)、その他(通信費)の一部については、平成29年度に持ち越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、サブテーマ1の「ネットワーク組織の構造や特徴と企業家ネットワーク形成に関する研究」について、研究フェードを当初計画より高めて進度を上げて完了させるとともに、サブテーマ2の「ネットワーク組織内の互酬性規範・信頼と企業家の社会関係資本の獲得に関する研究」についても着手する計画である。そのため、昨年度に計画をしていた4.、5.についても実施していくことで、予算も使用していく。 また、サブテーマ2については、 6.先行研究のレビュー、7.命題の導出と第2次インタビュー調査の準備、8.第2次インタビュー調査の実施、8.第2次インタビュー調査の結果の検討と仮説構築及び論文作成についても、実施していく予定である。そのため、平成28・29年度に計上していた、質問票調査の実施、第2次インタビュー調査、成果報告での国内外学会参加の予算についても、順次執行していく予定である。
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