研究課題/領域番号 |
15K17133
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
守 政毅 立命館大学, 経営学部, 教授 (00434704)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ネットワーク組織 / 企業家ネットワーク形成 / 構造的隙間 / 中華総商会 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、「ネットワーク組織の構造や特徴と企業家ネットワーク形成に関する研究」を継続するとともに、「ネットワーク組織内の互酬性規範・信頼と企業家の社会関係資本の獲得に関する研究」に着手した。具体的には、前者については、ネットワーク組織構造と活動を構成すると要素、構造的隙間の橋渡しによる企業家ネットワーク形成に与える影響を変化させるモデレータの抽出と、中華総商会の組織構造と活動についてのデータベースをもとに、日本、カナダ、インドネシアを追加して実証分析を実施した。後者については、企業家のネットワーク組織運営への参画・貢献度と、信頼関係の構築による社会関係資本が獲得との関係に関する命題を構築するため、先行研究を丹念にレビューをした。そのうえで、ネットワーク組織内の規範、企業家の組織活動への参加、参画、貢献する度合いと、信頼構築による社会関係資本の獲得への影響を複数国で比較するため、2017年9月に「第14回世界華商大会」(ミャンマー・ヤンゴン)に参加した参与観察と、日本中華総商会の会員を中心にインタビュー調査を実施した。 【学会報告】1.「網絡組織活動下的華商企業家網絡形成機制:香港中華総商会和新加坡中華商会的案例分析 (ネットワーク組織の活動による企業家ネットワーク形成に関する研究 -香港中華総商会とシンガポール中華総商会の事例分析にもとに-)」、「キ南大学東南亜研究与華僑華人研究90周年記念大会国際研討会」(2017年7月16日、於:キ南大学(中国広東省広州市)) 【学術論文】1.守政毅(2017)「ネットワーク組織の活動による企業家ネットワークの形成に関する研究 -香港中華総商会とシンガポール中華総商会の事例分析をもとに-」、『九州経済学会年報』第55号、149-157頁。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は、「ネットワーク組織の構造や特徴と企業家ネットワーク形成に関する研究」について、シンガポールと香港の中華総商会のケースを比較検討し、国際シンポジウムで中国語で報告するとともに、論文として公刊した。また、比較対象国を増やし、データ分析を継続して論文執筆に繋げようとしている。併せて、「ネットワーク組織内の互酬性規範・信頼と企業家の社会関係資本の獲得に関する研究」に着手した。先行研究のレビューに基づく仮説構築と、各国の中華総商会が組織し、華人企業家が参加をしてビジネス・ネットワークの形成を通じた社会関係資本の獲得を図る場である「第14回世界華商大会」において、参与観察とインタビュー調査を行った。そのデータを整理するとともに、本格的な各中華総商会での調査に向けた質問票調査に取り掛かっている。 他方で、平成27年度に引き続き、平成29年度にも学内役職を務めたために、校務による過重な負担が生じ、研究業務に十分な時間を確保することができなかった。3年間の本研究期間中に2年間にわたって校務負担が生じたために、計画スケジュールと照らして遅れが蓄積し、1年間の期間延長申請を行い、承認を受ける事態となった。 平成30年度は、研究エフォートを当初計画より高め、進捗の遅れを挽回して、本研究を当初の計画通り完成させたいと考えている。併せて、その成果を学会報告と論文執筆を通じて、逐次広く社会に公表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、サブテーマ1「ネットワーク組織の構造や特徴と企業家ネットワーク形成に関する研究」と、サブテーマ2「ネットワーク組織内の互酬性規範・信頼と企業家の社会関係資本の獲得に関する研究」から構成される。平成30年度は、1.がほぼ完成しており、2.について本格的に研究を実施する。 1については、平成28年度まで行ったシンガポール、マレーシア、香港に加え、平成29年度に行った日本、カナダ、インドネシアを追加して実証分析結果を踏まえて、ネットワーク組織構造と活動を構成すると要素、構造的隙間の橋渡しによる企業家ネットワーク形成に与える影響を変化させる要因の理論化に取り組む。その成果については、関連する中国経済・経営学会、九州経済学会で報告して、論文にまとめる予定である。 2については、平成29年度に行った仮説構築と、「第14回世界華商大会」での参与観察とインタビューを踏まえて、企業家のネットワーク組織運営への参画・貢献度と、信頼関係の構築による社会関係資本が獲得との関係に関する命題を構築したうえで、まずは日本中華総商会の協力を得て、会員企業家へのインタビューを通じて、実証分析により検証可能な仮説を導出する。そのうえで、質問票調査から得たデータを用い、仮説検定を行う。結果を検討し、論文を作成する。研究成果をとりまとめ、平成31年度に国際ビジネス研究学会、中国経済・経営学会などの国内学会で報告する。 1と2の成果を統合的に分析し、社会ネットワーク組織が企業家のネットワーク形成と社会関係資本獲得に与える影響を説明する理論構築を図っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成27年度と平成29年度は、学内役職を務め当初の想定以上に校務の過重な負担が生じ、当初3年間で計画した本研究が予定通り進捗しなかった。平成29年度ではサブテーマ2「ネットワーク組織内の互酬性規範・信頼と企業家の社会関係資本の獲得に関する研究」について、①第2次質問票調査の準備とプリ・テスト、②第2次質問票調査の実施、③第2次質問票調査の分析と学会報告、④総括:ポストホック・アナリシス及び論文作成、学会での発表を予定していた。しかし、3年間の累積的な遅れにより、平成29年度の約1年分の計画が未着手となった。そのため、平成30年度まで1年間の延長を行い、平成29年度に計画した研究を実施する予定である。 (使用計画) 平成30年度は、サブテーマ2について、①命題の導出と第2次インタビュー調査の実施、②第2次インタビュー調査の結果の検討と仮説構築及び論文作成、③第2次質問票調査の準備とプリ・テスト、④第2次質問票調査の実施、⑤第2次質問票調査の分析と学会報告に取り組む。以上の研究活動に対して必要な、消耗品費(学術図書費等)、旅費(インタビュー調査、学会報告)、人件費・謝金(専門知識の移転、インタビューや質問票調査のデータ整理・分析を行うRAへの謝金)の予算を、順次執行していく予定である。
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