平成30年度は、「ネットワーク組織の構造や特徴と企業家ネットワーク形成に関する研究」と、「ネットワーク組織内の互酬性規範・信頼と企業家の社会関係資本の獲得に関する研究」を同時並行的に推進した。 前者については、ネットワーク組織構造と活動を構成すると要素、構造的隙間の橋渡しによる企業家ネットワーク形成に与える影響を変化させる要因を、シンガポール、マレーシア、香港、日本の4か国の中華総商会の組織構造と活動についてのデータベースをもとに、各中華総商会の創設経緯と設立目的、2007~2017年の10年間にわたる年次目標や活動計画と、実際の活動実績を分析した。その結果、中華総商会の所在国における華人の政治的・経済的位置づけ、創設経緯と設立目的の相違に応じて、組織構造と年次目標や活動計画に関わる意思決定、ならびに実際の活動内容が影響を受けることが、また、華人企業家のネットワーク形成においては、中華総商会と他組織間の組織観関係の形成で相違が見られ、対外的な企業家ネットワークの形成において影響を受けることが明らかになった。 後者については、企業家のネットワーク組織運営への参画・貢献度と、信頼関係の構築による社会関係資本が獲得との関係に関する命題を構築するため、先行研究を丹念にレビューをした。そのうえで、ネットワーク組織内の規範、企業家の組織活動への参加、参画、貢献する度合いと、信頼構築による社会関係資本の獲得への影響を複数国で比較するため、2017年9月に「第14回世界華商大会」(ミャンマー・ヤンゴン)での参与観察と、日本中華総商会の会員を中心にインタビュー調査を基に、分析を進めている。 両者の研究成果については、平成31年度・令和元年中に学術論文としてまとめ、投稿する予定である。
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