本研究では、高度専門職の経営管理に関して研究してきた。対象とされた主な専門職は、薬剤師、一級建築士、中小企業診断士であった。研究初期、調剤薬局に勤務する薬剤師複数名に定性調査を行い、彼らの職務満足について分析した。定性調査は全国的な規模で実施され、「専門能力の発揮機会」の有無が薬剤師の職務満足に大きな影響を及ぼしている、ということが判明した。 この調査結果を受けて、それが他の高度専門職においても妥当性をもつか否かを分析することとした。そこで、企業に所属する一級建築士と中小企業診断士にも同様の調査を複数回実施した。一級建築士に対しては主に西日本で、中小企業診断士に対しては関東と関西で実施された。その結果、他の高度専門職においても、薬剤師とほぼ同様の結果が得られた(それぞれ、2015~16年度に論文執筆済み)。 次に、薬剤師を対象に定量調査を実施した。調剤薬局企業A社の協力の下、600名超の薬剤師に定量調査を実施することができた。ところが、この段階で「国際共同研究加速基金」に採択され、日英の薬剤師の比較研究を行う機会に恵まれた。そのため、A社で集めたデータに多変量解析を行い様々な分析をしているものの、まだ論文として公表していない。 2016年度は、英国のUniversity College London School of Pharmacyに所属し、同大学の倫理委員会に研究の承諾を得たのち、イングランド全域で薬剤師25名ほどに定性調査を実施した。また、一時帰国して日本でも13名に調査を実施した。日英の調剤薬局の各業務のうち、いずれが「専門能力の発揮機会」と認識されているのか、職務満足を生むのか、そして「専門能力の発揮機会」と「職務満足」との関係性について調査した。2017年度は、日英比較研究の結果を分析し、インターナショナル・ジャーナルに投稿する論文を執筆した。
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