研究課題/領域番号 |
15K17135
|
研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
李 澤建 大阪産業大学, 経済学部, 准教授 (40570495)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 新興国 / 自動車 / 能力構築 / 製品開発 / 成長戦略 / 事業環境変化 / 経営資源 / 海外研究開発拠点 |
研究実績の概要 |
本研究は、アジア新興国の民族系自動車企業の成長過程、とりわけその要とされている製品開発活動に対する観察を通じて、これらの企業がいかに能力構築を展開し、開放経済のもとで先進国企業との競争を耐えられてきたかをを把握することを主たる目的としている。その際、企業の能力構築努力と競争優位創出との因果関係を整理するために、事業環境の変化(外部動因)と企業の経営資源マネジメントの動態(内部制約)との関係を軸に、文献・資料収集のほか、実地調査を重んじて実施することが特徴である。 第一、事業環境の変化などの外部動因について、前年度の文献の収集・分析のほか、新興国地場企業の傍ら、同一市場で競争している欧米日韓などの先進国企業等の関係者に対するヒアリング調査や、国内外の専門領域の有識者との意見交換を積極的に行った。それによって、新興国市場の未熟性と予知しにくさなどの制約条件をヘッジし、変化の本質の部分をより正確的に把握するができたのである。 第二、新興国民族系自動車企業の内的成長について、国内での取り組みのほか、彼らの能力構築の勝敗にとって重要な役割を担う海外研究開発拠点に対する実地調査を重点的に行った。 従来諸先行研究では、主に対象企業の国内における研究開発活動を主体として分析されているため、その成長要因を「外部資源依存」に帰結したのであるが、各企業の海外研究開発拠点に関する情報が入手不可能の制約を受けたことも無視できなかった。したがって、H28年度では、既存研究の限界を克服するために、アジア新興国民族系自動車企業の海外研究開発拠点での能力構築がいかに全社の競争優位創出に貢献できるかについて、検討を加えた。 具体的に、H28年度には、実地調査18回、学会報告3回(うち海外1回)、招待講演1回を行い、専門書の分担執筆1章を刊行した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度のH27年度に新興国の主要代表的な民族系企業の国内開発拠点を訪問し、その研究開発活動について調査を行った。H28年度では、前年度の到達点に立ち、該当企業の海外研究開発拠点に対する追加調査を実施したことは、従来外部から観察できなかった、新興国民族系自動車企業の経営資源マネジメントのメカニズム及び能力構築における進化プロセスに対する体系的に解明であり、既存研究にとっての一歩前進でもあった。 H27年度に組立てたフレームワークは主に対象企業の国内における活動に立脚したもので、H28年度では、新興国自動車企業の製品開発活動における内外拠点間の連携が加えられたことで、フレームワーク全体は一層精緻化できた。 また、すでに収集した先進国代表的な自動車企業に関する経営状況、市場戦略、経営資源収集の方法、その経営資源の社内活用、製品開発の概要などの実態との比較分析において、後発する新興国民族系自動車企業の能力構築の特徴及びそのボトルネックに関する暫定的中間結論に至った。 現在、関連部分の英文化、論文化などの作業も並行しており、来年の成果発信に向けて準備を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
市場競争・事業環境に関する新たな変化を捕捉しながら、アジア新興国の民族系自動車企業における内的成長に対してより立体的な観察を行う。とりわけ、海外研究開発拠点に関する追加調査をいっそう多く実施し、より客観かつ周到な状況把握に努める。
成果発信について、論文化の同時、国際学会発表そして、国際論文誌への投稿を順次に実施していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2016年10月より学内では「海外留学」の機会をえたため、関連規定に従い、大学より滞在費が支給されたのである。 他方、学内の執行要領では、滞在費は出張際の宿泊費と日当にみなされるものと規定されているため、2016年度後半の科研費予算による出張では交通費のみ計上され、宿泊費及び日当が支給されない結果になった。そのため、当初の計画より多く調査実施ができたと同時に、実際支出額が当初の計画額より大幅に減少したのである。
|
次年度使用額の使用計画 |
「海外留学」は2017年9月に終了するため、該当次年度使用額はH29年度の予算と合算して、最終年度の研究計画の遂行に充てる。
|