研究課題/領域番号 |
15K17137
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研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
矢寺 顕行 大阪産業大学, 経営学部, 准教授 (20582521)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 実践論的転回 / 採用 / 評価 / 計算 / 労働市場 / 人材価値 / 評価実践 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、企業の採用における人材の評価に注目し、実際に行われている選抜プロセスの実践を明らかにすることである。選抜プロセスの実践を明らかにするために、本研究では市場の実践論的アプローチに基づいた分析視角を提示し、選抜における評価の問題を中心に上記の目的に取り組んでいくものである。 当該年度(平成29年)の研究実績としては、第一に、採用研究、特に欧米の産業組織心理学及び人的資源管理論におけるリクルートメント研究に関するレビューと、近年我が国において増加傾向にある募集・選抜方法の抜本的な改革を行った企業のケース・スタディをまとめた著書が、今年度(平成30年)7月に共同研究者との共著で出版予定である。第二に、市場の実践論的アプローチに基づく分析視角における近年の研究進展を踏まえ、欧米を中心に展開される価値評価研究(Valuation Studies)のレビューを行い、この価値評価研究に基づく人材の価値の評価実践に関する研究課題を提示する論考が刊行された(「組織における人材の価値と評価の実践に関する考察」同志社商学第69巻第6号)。この第二の研究課題は、本研究の採用における人材の評価を正面から捉えるものであり、この課題を明らかにするためのフィールドワークを中心とした経験的研究が今後の課題となる。そのためのリサーチサイトの探索を行ったが、当該年度中にリサーチを行うには至らなかった。 当初の研究計画では、当該年度にて本研究は完了する予定であったが、研究計画初年度の分析枠組みの大幅な再検討が必要となったことと同時に他の業務としての学務が多忙となり、初年度の遅れを取り戻すことができなかった。このことにより、当初予定の研究目的を完遂することができず、補助事業期間の延長を申請するに至った。延長された期間内に、先述の経験的研究を進め、本研究を完了させる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時の計画では、当該年度は本研究計画の最終年度であり、①採用担当者の評価能力、②複数の評価基準の影響、③評価における利害関係者の調整の3つの研究課題に関する調査結果をまとめ、研究成果として公開する予定であった。しかしながら、当初予定の分析枠組みの構築の遅れと、他の業務によるフィールドワークの困難から、補助事業期間内に上記の研究成果の公開に至らないという結果となった。 前年度の計画では、理論的検討は概ね進んでいると考えられたが、市場の実践論的アプローチに加え、その先の進展として価値評価研究の知見をまとめ、それを分析枠組みに組み込むという追加的な作業と、リサーチサイトの探索、フィールドワークの実行が当初予定よりも進まなかったことにより、結果、研究課題の進捗の遅れを取り戻すには至らず、前年度と同様、やや遅れているという状況にある。 この研究進捗の遅れに伴い、補助事業期間延長承認申請を行い、延長されることが決定したため、次年度(平成30年度)中にフィールド調査を進め、本研究の成果をまとめることとしたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に取りまとめた理論的研究によって提示された価値評価研究の研究課題と分析枠組みに従い、経験的研究を進め考察を加えていくことが今後の研究の方向性である。リサーチサイトに関しては現在数件が確定しており、インタビューを中心とした調査が実施される。 リサーチサイトは平成28年度、29年度において実施してきた採用革新企業の調査に加え、人事評価に関する調査の数件が予定されている。 なお、申請当初の研究課題①採用担当者の評価能力、②複数の評価基準の影響、③評価における利害関係者の調整といったものであったが、その後の分析枠組みの再検討と価値評価研究の進展を踏まえて、上記の3つの研究課題自体に若干の変更が加えられたものとなっている。しかしながら、採用における人材の評価の実践を問うという研究目的からすれば、研究課題がより理論的に精緻化されたといえる。平成30年度前期中にはフィールドワークを実施して調査を完了させ、後半に研究成果を取りまとめ、公開していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度の未使用額が多かったことと研究進捗の遅れと他の業務としての学務の増加により、物品の購入が計画通りに執行されなかったことと、旅費については、フィールドワークが上記の理由により予定通りに実施されなかったことなどによって次年度使用額が生じた。 次年度はフィールドワークが中心となるため、旅費に関してはこれに使用する。物品費については、とりわけ大きな備品の購入予定はないが、調査の過程で必要となる追加的文献と消耗品を中心に使用する。
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