研究課題
本研究は日本企業のマーケティング部門がどのように部門間調整を行っているのかについて検討したものである。マーケティングの機能は組織内で異なる部門に分散して存在することが一般的である。本研究は組織内におけるマーケティングの在り方が、企業の業績とどのように関係しているかを検討した。BtoC(消費者向け)事業のマーケティング関連部門に勤める係長・リーダー級以上の従業員を対象に、Web調査を実施した(N=568)。マーケティング機能に関連がある部門を9つ挙げ、マーケティングに関係する意思決定における影響力を合計が100になるように配分してもらったところ、営業部門の影響力が最も強く(30.9)、次いで経営企画(20.8)、マーケティング部門(17.2)の順となった。意思決定の方法としては、マーケティング部門が他部門に指示を与えるという集権型の方法が最も多かったが(34.0%)、全体を俯瞰する部門が存在せず業務プロセスが連続的に行われるパターン(26.8%)や、マーケティング部門がアイディアを出すものの部門間の調整が行われないパターン(21.1%)も観察された。つまり、約半数の事業において意思決定が調整されないままであるということが明らかになった。こうした傾向はマーケテイング関連部門間のコミュニケーションにも表れている。公式・非公式のコミュニケーションは多くとも2週間に1回程度であり、顧客や市場に関するコミュニケーションは1か月に1回あるかないか程度であった。結果的に、市場の変化や顧客イメージ、マーケティング戦略に関する部門間の情報共有は、曖昧なままであることが分かった。部門間の調整やコミュニケーションの頻度は、事業成果と正の関係が有意に確認された。つまり、日本企業のBtoC事業ではマーケティング関連の調整を推進することで事業成果を改善できる可能性が示唆された。
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マーケティング・ジャーナル
巻: Vol. 37, No. 1 ページ: 5-21