本研究は地域(プレイス)ブランディングにおいて、地域間連携の重要性に基づいて、その構図を明らかにすることを目的としている。昨年度の調査から人文主義地理学の知見(プレイス概念、センスオブプレイスなど)を適用することにより、複数の自立した主体が他の主体を意識しながら、プレイスブランディングに取り組む様相を把握しうることが分かった。 その視座に基づいて、国内でも最大規模の広域ブランドである瀬戸内ブランドを分析した。関係者のヒアリングによれば、各主体のセンス・オブ・プレイスを起点に独自の展開を生み、瀬戸内ブランドに結実していく様相を把握することができた。とりわけ幾つかの企業が本業を通じて地域空間に対して意味を見出し、企業の発展とともにプレイスが確立する中で、瀬戸内を構成する自治体を啓発し、せとうちDMO へと結実したという。同DMOは充実した経営資源を保持しないため、マネジメント組織というよりはブランディングに関わるアクターに方向性を示すディレクターであり、地域内外とのネットワークを結んでいくプラットフォームとしての役割に徹していることが分かった。 ポートランドや瀬戸内など研究期間中に実施した調査に基づき、プレイスブランディングのモデルを構築した。モデルでは人々のセンス・オブ・プレイスが言語化され、共有されていくことにより、行政単位に捉われないプレイスブランディングが展開されうることを示した。
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